合格体験記(のり・みやべ)

 私は平成19年度の中小企業診断士試験の一次・二次をストレート合格することができた。勉強開始から16ヶ月の長い間、モチベーションを下げずに走り続けることができた。この理由として、受験校のカリキュラムにうまく乗ったことと、「ねくすと勉強会」(以下、ねくすと)に参加して合格のための解法と強い共同意識を得られたことが非常に大きいと思う。そこで、少しでも後進の方々の参考になるかもしれないと考え、私の学習方法を公開させていただく。

<受験の動機>

 そもそも、私は12年前の平成7年に、旧制度の一次試験(商業部門)に合格した経験がある。合格直後に海外赴任となったが、当時は一次試験合格の権利は一生残る(二度と受ける必要がない)ルールだったため、「帰国してからじっくり二次に取り組もう」と考えていた。ところが帰国した平成13年に制度が一新され、一次・二次とも試験内容が大幅に変更となったうえ、二次受験の権利が一度しか使えなくなってしまった。帰国直後で時間が取れなかったこともあり、再受験のモチベーションが高まる機をうかがっている間に、いつの間にか5年が過ぎてしまった。

 再受験を決心したのは、二つの理由がある。一つは仕事上の理由である。平成17年に社内の異動により関連会社の経営の一角を任された。この会社は従業員50人ほどの技術商社で、ちょうど平成18年度二次試験のA社のような中小企業である。実際に企業の舵取りをする中で、診断士知識をブラッシュアップする必要性を痛感するようになった。もうひとつは個人的な理由である。わが家には現在高2,中2のふたりの子がおり、平成18年の春に中学・高校ダブル受験した。このため、家族一丸となってほぼ2年間受験に取り組んだ。幸い、ふたりともそれなりの希望校に入学し、クラブ活動も自分で選んで新しい生活にあっという間に溶け込んでいった。一方父親はその頃、一つの目標を達成した後の目標を失った、いわゆる「五月病」にかかっていた。漫然と過ごす日々の中で、次の目標としてセットしたのが、「中小企業診断士の再受験」であった。

<一次学習>

 再受験にあたっては、二次受験の権利を保持した上で、当初から一次・二次のストレート合格に照準を合わせた。一次からやり直したのは、①旧制度の3部門制(商業、鉱工業、情報)から一本化されたことにより、試験の範囲が広がっていること、②そもそも、経営全般知識のブラッシュアップが一つの目的であること、③新制度の二次試験に合格するためには一次試験合格の知識が必要であると考えたこと、といった理由からである。

 このために、前回受験の時からカリキュラムに定評のあったTb社の講座説明会に5月に参加し、講義とDVDを併用するカリキュラムに納得して、その場で申し込み手続きを取った。

 そのときに立てた学習計画として、スタートが早い(6月末)メリットを活かし、なるべく早期に一次合格のめどをつけて二次学習に取り組むことを当初から考えていた。前回の学習で、一次試験の取り組み方はある程度心得ていたので、あとは効果的に情報をインプットし、アウトプットに結びつけることを心がけた。

 具体的には講義前にDVDで一度回してサブノートを作り、講義で復習して知識を固めていく、という作業を繰り返した。さらに1月からは「どねく=土曜ねくすと」に参加して、Ta社のスピード問題集(=スピ問)で各科目の知識を補充した。この結果、2月に始まったTb社のアウトプット演習ではほとんどの科目で90点近くの得点が得られるようになった。そしてゴールデンウイーク前のTb社第一回一次模試の結果、上位2%以内に入って合格のめどをつけられたため、一次の勉強は中断して二次に専念することに切り替えた。(もっともこれは二次受験の権利を保有していた心の支えもあったので、二次受験資格のない方々にお勧めできることではない。)

 一次学習に戻ったのは、試験の3週間ほど前である。すでにベースはできあがっていたので、あとは今までの教材や模試の復習、および過去問を高速で何回も回した。特に、直前の暗記で得点の上乗せが期待できる法務と中小については、全科目の半分ぐらいの時間を費やした。この結果、7科目500点超という自分でも驚く結果を出すことができた。

 一次学習のポイントをまとめると、以下のことが挙げられる。

  1. 科目ごとの体系を、まず頭にたたき込むこと。体系が理解できていれば、細かい知識は直前補充でも間に合う。
  2. 二次を見据えて、二次のための基礎力をつけることを優先すること。このため、二次関連分野の知識は漏れなく固めること。
  3. 財務は二次でも大きな壁となるため、「足切りがなければいい」という安易な目標設定をせず、確実に合格点を取ることを目指すこと。
  4. 二次に比べ客観的・定量的実力値を測りやすいので、常に自分のポジションを意識して、試験日から逆算した学習計画を立てること。
  5. 一次に合格しない限り二次を受験できないので、余裕を持って合格できる(どんなに下ブレしても合格点を超えられる)レベルを目指すこと。
  6. 一次合格に自信を持てるまでは、二次に手を出さないこと。

<二次学習>

 さて、時間を戻して二次の学習方法に移る。二次はTb社のストレートコースのカリキュラムだけでは二次専念組と比較してアウトプットがどうしても少なくなるため、勉強会への参加を早いうちから決めていた。ねくすとは勉強会が水曜日にありTb社とバッティングしないこと、ホームページが更新されており、活発な活動が確認できたこと、といった理由から、新会員募集をはじめた10月頃に参加を申し込んだ。(「どねく」というものがあることを入会してから知り、結局バッティングしたが。)12月のオリエンテーション、およびキックオフで合格者の生の声を聞き、この参加時期とほぼ同時にTb社から二次教材が送られてきて、「いよいよ来たな」というモチベーションが一気に高まった。

 それまでの一次中心の学習時間は月50時間程度だったが、年末年始の休暇を迎えるにあたり、これから二次試験日までの約10ヶ月間、1ヶ月150時間を自らに課した。これは休日(年休も含む)に10時間、その他の日に平均2時間で達成できるので、それほど厳しい目標とは思わなかったし、結果的にも(計ってはいないが)それ以上の学習時間を確保したと思う。

 しかし学習時間を決めたとはいえ、二次は初学だったため何をやればいいかは「走りながら考える」状態だった。そこで年末年始は、届いたばかりのTb社の二次テキストを自分のサブノート化する作業に没頭した。休みの7日間、毎日12時間以上かけた結果、2冊のテキストは事例ⅠからⅣまで、それぞれA4で10ページ程度のサブノート化されてPCに打ち込まれた。(これをもとに二次試験日まで新たな情報を書き加え、試験当日はこれをお守りに持っていった。)

 このサブノート化の作業で覚えた事例解法のステップだけを頼りに、平成18年事例Ⅰを初めて解き、1月10日の「すいねく=水曜ねくすと」に初参加した。当面は一つの事例に3時間×2回、計6時間かけて議論するということで、「何をそんなに話すことがあるのだろう?」というのが当時の心境だった。しかし始まってみると、その3時間があっという間に過ぎてしまう。たった3ページ程度の与件に、自分が全く気づいていない情報が満載されていることに大きな驚きを感じた。

 また、設問全体のストーリー、つまり「事例の方向性」などあまり考えず、設問一つ一つに個別対応していることに気づかされた。さらに、表現力の稚拙さ、因果関係の弱さ等、課題が続々見つかり、二次の奥の深さを実感するとともに、これからやるべきことの壁の高さに身が引き締まる思いがした。

 奥の深さを知ると、答案作成にとんでもなく時間がかかるようになる。同じ事例を、第一回目は2時間ほどで解いたが、翌週の再答案作成には10時間ぐらいかかってしまった。これほど頭を振り絞ったつもりの答案を持ち込んでも、仲間と読み合わせているうちに設問に答えていない点や矛盾点がぞろぞろ見つかり、OBからは一目で指摘を受けてしまう。密かに狙っていた「ゴールデンウイークまでに合格を確信できるレベルに達する」という目標が、いかに図々しいものであるかを思い知らされた。

 じっくり時間をかけて作成した答案を持ち寄り、その議論をしてもう一回ブラッシュアップする、翌週さらに議論を深める・・・という1週間のパターンが定着してきた3月18日、受験校の先陣を切ったM社の第1回模試を受験した。初見の事例を80分で解くのは生まれて二度目、しかも一日四事例という未体験ゾーンであった。会場受験日はどねくと重なったため、通信受験とした。別の日に仲間と集まって、試験のタイムテーブル通りに解き、直後に投函した。結果は、合計で上位16%程度。初体験としては上出来といえるか? 少なくとも、自分が合格可能圏に入っていることは実感できた。

 すいねくの進行が2週間一事例から1週間一事例にスピードアップし、それにも慣れたゴールデンウイークになり、ねくすとOB間で方向性を見極める方法として話題になっている伝説の「ウメソッド」の説明会があった。(ウメソッドの詳細は、門外不出・要体験。)ここで、自分が方向性と考えていたことが、似て非なるものであることを思い知らされた。う~ん、奥が深い。

 この直後に受けたL社の第1回二次模試も、上位14%、なんとか合格圏をキープ。ウメソッドを極めて、一気に合格確実圏に突入だ、と少しずつ自信を深めていた。そんな鼻っ柱をへし折られたのが、5月末に受けたM社第2回模試だった。この模試は、答案を書いているときは自信満々だった。20分ぐらいで方向性を見極め(た気になり)、制限10分前には全事例とも終わらせ、余裕で答案の見直しをしていた。しかし当日配られた模範解答をみて愕然。方向性を外しただけでなく、答案が非常に雑であることに気がついた。例えば、3つ書くべきことを1つしか書いていない、因果関係の間が飛んでいる、などである。

 結果、当然ながら散々の成績である。合計で上位61%(つまり下位39%)、しかも全ての事例で50%以下であった。自信のあった事例Ⅳも、25点の計算問題を一つまとめて落とした。ここで、薄々感じていた二次の恐ろしさを二つ体感した。一つは、受験生の実力差がほとんどなく、少々気を緩めただけで一気に成績が落ち込むこと、もう一つは、二次試験においては「合格可能圏」までは一次合格者なら誰でも達せるが、「合格確実圏」というものはないと思った方がいいということである。少なくとも、自分の実力値を一次試験のように客観的・定量的に計ることは不可能であるように思えた。

 夏前にこのことを体感したことは、その後の学習に緊張感を得る意味で非常に効果があった。もう一つラッキーだったのは、事例Ⅳで例の計算問題を落としたことである。なぜなら、これを取っていれば合計で上位20%以内に入るため、これほどの反省にはならなかったからである。「相対的合格確実圏」が見えないなら、自分の「絶対的実力値」を高めるしかない。この後、自分の答案の質をいかに高め、いかに安定させるか、ということを集中して考えるようになった。

 その一つの方法として、この頃に定着させたのが答案を書き始める時間である。試行錯誤のうちに、自分の場合は開始後30分から40分の間に与件と設問が一気につながってくることが分かってきた。そこで、「何があっても開始から40分までは答案を書き始めない」ということを徹底させるようにした。このことで、Tb社の答練や仲間内のその場解き等での答案が安定してきたことを実感できた。

 この精神的安定感が、7月になって一次準備に集中してもあせりを感じないバックボーンになったと思う。そして8月の一次試験で合格を確信した後、一気にラストスパートモードに突入できた。一次を高得点で突破したことで、精神面で拍車がかかっていた。

 一次試験終了以降は、二次過去問事例をすいねく・どねく・自習で何度も回した。自習の時は、過去のねくすとでの自分の答案や仲間の答案から新たな気づきを求め続けた。これに加え、「ねくすとオプション会」を開催し、過去問のIT設問だけをまとめて解いたり、事例ごとに4年分を縦読みして共通点を探ったりし、それらの議論の中でも新たな発見がいろいろあった。また、事例Ⅳだけはなるべく広く問題に取り組み、計算問題は落とさない準備を整えた。

 このような中、一次試験後に受けた、L社の第2回模試、M社の第3・4回模試では回を追うごとに成績が上昇してきた。最後となった本試験1ヶ月前のM社模試では上位5%まで達し、自分のやっていることに自信を深めるとともに合格イメージを持てるようになった。

 この頃から心がけるようにしたのが、80分間のルーチンを定着させることである。「平常心を保ち、普段通りに解答すれば必ず合格できる」、と自分に言い聞かせ、前述の80分間のタイムマネジメントを始め、設問文や与件のマーカーの引き方から、机の上に置くペンや消しゴムの数や位置まで、ルーチン化できることは全て行うようにした。これは、初めて受ける二次試験の何とも言えない雰囲気の中でつぶされずに済んだ大きな要因である。

 本試験では事例Ⅲで(多分)大きなミスを犯してしまったが、これは精神的な問題に起因するものではなく、おそらく何度やっても初見ならば同じ答えを書いていただろう、という確信犯的ミスであった。自分なりの方向性で書き尽くしたので、後悔はなかった。これも含め、試験後は「現時点での自分の実力を出し切った」という納得感、充実感を持つことができた。

 二次学習のポイントをまとめると、以下のことが挙げられる。

  1. 当初は、時間を気にせず事例全体の「方向性」をつかみ、ストーリー性のある答案を自分の現時点の総力を尽くして書くこと。
  2. 自答案へのOBの意見、仲間の意見は素直に聞くこと。その傾聴力が、与件や設問からの「出題者のささやき」を聞き取る力になる。
  3. 試験で表現できるのは制限字数内の答案だけなので、それ以外の解説や付け足し、言い訳などは点数にならない、と心得ること。(ただし、アドバイスを受けられることもあるので、「いうな」ということではない。)
  4. 事例Ⅳの方向性を甘く見ないこと。事例Ⅳにおける計算問題は、陸上競技のハードルのようなものであり、「軽く飛んで当然だが、足を引っかけても転ばなければOK」である。最も大切なのは走ること、つまり方向性を読み、答案に反映することである。
  5. 模試は、自分の問題点を発見する場とこころえ、結果に一喜一憂しないこと。問題が発見できることを機会と捉え、それを解決することで自らの絶対力を高めること。
  6. 本試験当日まで自らの絶対力を高め、当日は普段通りの自分が出せるよう、すべての準備を整えること。

<ねくすとの位置づけ>

 以上のように、学習方法や学習計画は、ねくすとOBや仲間のやり方・意見を参考にすることも多かったとはいえ、主に自分自身で考え、自分自身で軌道修正しながら試験日を迎えた。ねくすとのスケジュールに振り回されず、逆にそれをペースメーカーとして利用することを心がけた。

 ねくすとの存在が自分にとって何よりも大きかったのは、精神的な支えである。本来ならば孤独な個人戦であるはずの受験勉強において、団体戦として試験の直前まで励まし合い、助け合う、という共通した気持ちをOBとメンバーが持ち続けていた。そしてこの駅伝のような一体感が、試験場で「仲間と一緒に合格するんだ」、「自分だけの試験ではないので、最後まであきらめるわけにはいかない」、という強い気持ちを生み出していたと思う。

 また、「キチガイのように勉強する」というあるOBの言葉に代表される我々の勉強ぶりは、キチガイだらけの集団内ではそれが普通の人であり、「当たり前のこと」になったという効果もあった。結果として、1日12時間勉強することが全く苦にならなくなっていた。このスタミナが、本試験の事例Ⅳの最後の1秒まで集中力を失わせない原動力となった。

 ねくすとに入会できなければストレート合格は難しかったであろう、と今実感している。ここまで指導、応援してくださったOBの皆さん、貴重な時間を共有した勉強仲間にはいくら感謝しても尽きないほどである。この感謝の気持ちを形にするには、新OBとして次の受験生の目標を達成するために少しでもお役に立つよう尽力するしかない。そして、このような歴史を重ねてきたねくすとのポジティブ・スパイラルをさらに発展させていきたい。

<最後に:ねくすとの後進の皆さんへ>

 私は、「忙しいから」という言い訳が嫌いである。なぜなら、それは「このことの優先順位が低い」と同義だからである。自分に嘘をつくことはできないが、自分への言い訳はいくらでもできる。「忙しい」のは便利な言い訳である。しかし本当に一番大切と思えば、優先順位は最高になり、「忙しいからできない」はずはない。

 診断士受験を他の人から強制された人はあまりいないと思う。自分で選択した以上、仕事等の自分ではコントロールできないことを除き、自分の中での最優先事項として受験に取り組むべきであろう。それが、あえて厳しい選択をした自分のプライドに対する返礼である。そして、目標を達成してこそのプライドでもある。

 また、そうして集中することで、結果として試験に費やす時間も最短になると思う。意識を変えるだけで、日頃何も考えずに過ごす隙間時間も勉強時間に切り替えられる。

 ねくすとは合格を目指す集団であり、合格までのプロセスを楽しむ集団ではない。合格点を取るために切磋琢磨する場所であり、誰も知らないニッチな知識を比べ合ったり、自分の考えを主張する場所ではない。

 ウメソッド流で一人一人の学習の方向性を考えたとき、その頂点にあることは「試験に合格すること」であり、これは受験生全員に共通しているはずである。頂点までの行程は個人ごとに異なっても、この頂点を目指すことだけは常に意識として持ち続けていただきたい。そうすれば、現在の自分の行動が、頂点に最短距離でつながっているかどうか分かるだろう。

 そして、一日も早く後進にアドバイスを送る立場に来てください。待ってます。