※この合格体験記は私のような何度挑戦しても合格できない「多年度受験生」向けのアドバイスを兼ねている。そのため、かなり厳しいことも書いてあるが、ご了承いただきたい。
1.はじめに
私はコンピュータ・メーカーでシステムエンジニアとして働いている。私が中小企業診断士の勉強をはじめたきっかけは、システムエンジニアとしての提案力向上の一環として網羅的に業務知識を身につけたかったからである。
私は中小企業診断士の勉強をはじめてから合格するまで5年(このうち、1年間は全く勉強していないので、実質4年)かかった。
受験歴は以下のとおりである。
平成11年 旧制度(情報部門) 1次試験不合格
平成12年 全く勉強せず、受験もしない。
平成13年 1次試験合格。2次試験不合格。
平成14年 1次試験合格。2次試験不合格。
平成15年 1次試験不合格。2次試験合格。
何年も受験している方は私の体験記を参考にして欲しい。
2.合格できなかった理由
(1) 1年目(初めての1次試験-->不合格)
某大手受験機関に通ったが、そこの学習環境がひどかったためやる気をなくした。座席数より生徒数のほうが多く、早く行かないと席がないのである。授業料を支払ってしまい返金ができないので、我慢して授業には出席したが、やる気がないため予習・復習はしなかった。だが、やる気をなくした本当の原因は、私がどうしても診断士試験に合格したいと思っていなかったからであろう。当時はまだ20代だったので、勉強よりも遊びのほうが忙しかった。
勉強をはじめた当時は旧制度だったので、部門別に教室が分かれるようになってからは座席の問題は解決した。しかし、やる気は戻らずダラダラと講義を受講していた。
とりあえず1次試験は受験してみたが、当然のことながら不合格だった。原因は言うまでもなく勉強不足である。この年の勉強時間は受験機関の講義だけなので200時間くらいである。
不合格であったが悔しいという思いはなかった。某大手受験機関を選んでしまったことの後悔のほうが圧倒的に大きかった。
(2) 2年目(空白期間)
仕事が忙しくて全く勉強しなかった。私の今まで人生の中で2番目に仕事が多忙な年だった。
しかし、合格した年は私の人生の中で一番仕事が多忙な平成15年であったことから、勉強しなかったことを仕事のせいにするのはただの言い訳だ。本当は単にやる気がなかっただけである。
(3) 3年目(初めての2次試験-->1次試験合格、2次試験不合格)
1年目とは異なる受験機関に通い、平成13年度の1次試験に合格した。この年は難易度が低く、受験機関に通っていた人の7割以上は合格したと思う。この年、1次試験にかけた勉強時間は400時間くらいである。旧制度で勉強したことの大部分は忘れていたし、あまり役に立たなかった。
私が2次試験の勉強を始めたのは1次試験終了後の翌土曜日からである。はっきり言ってストレート合格しようだなんて全く考えていなかった。だから、2次試験対策はあまり乗り気でなかった。
某受験機関で初めて事例問題を解いたときは14点しか取れず、ビリに近かったが、その2週間後に模試を受験したときには上位30%以内に入っていた。当時、新制度の2次試験の合格率は旧制度と同じく20%くらいになるという噂が流れていたので、「たった3週間勉強しただけで上位30%に入るのだから、そんなに勉強しなくても合格できる」と勝手に思い込み、家では勉強しなかった。これは大きな勘違いであり、翌年も2次試験に落ちたことにつながる。
当時の2次試験対策は、週末に受験機関で講義を受けただけであった。そのため、インプットもアウトプットも不足しており、当然のことながら不合格だった。2次試験にかけた勉強時間は70時間程度であり、これで合格するわけがない。そもそも、ストレートで合格する気が全くなかったのだから勉強するはずがない。
(4) 4年目(2回目の2次試験-->1次試験合格、2次試験不合格)
平成14年度の1次試験は試験5日前から1日2時間、計10時間復習しただけで合格した。これは前年度しっかり勉強していたためである。
2次試験対策は、通年で2つの受験機関に通った。さらに別の受験機関のオプション講座を受講した時期もあったので、多いときには週3校に通っていた。おかげで知識不足により解けない問題はなかった。模試では上位(全国模試でTop10入りなど)に入ることもあったし、この年2次試験で出題されたヨーロピアンタイプのコールオプションでさえ知っていた。
しかし、結果は不合格だった。原因は、仕事を言い訳にしてあまり勉強しなかったことと、受験機関頼りのインプット重視の勉強によるアウトプット訓練不足である。この年の勉強時間は400時間くらいであり、ほとんど受験機関での勉強であった。家に帰ってからはほとんど勉強していない。
アウトプットの訓練不足と感じたのは以下のものがある。
・解いた事例数が少なかった。(1年で60事例くらい)
・事例をじっくり時間をかけて深く考えなかった。(すべて80分で解いていた)
・返却された答案の見直しをしなかった。(自分の解答の悪いところを自覚していなかった)
(5) 5年目(2次試験は合格、でも1次試験は不合格)
平成15年は私の人生の中で一番仕事が多忙な年であり、月300時間以上働くことも珍しくなかった。2次試験対策の勉強をする暇さえなかったのだから、1次試験対策には手が回らなかった。だが、これは単なるいい訳である。やる気になれば勉強する時間くらいは作れる。
1次試験が不合格だった本当の理由は、平成13,14度の1次試験が非常に簡単だったので1次試験を舐めていたためである。1次試験なら1週間程度復習すればいつでも合格できるつもりでいたのが誤りであった。それに、1次試験免除の権利があったので無理して勉強しようとは思わなかった。
3.合格できた理由
平成15年、2次試験は「3度目の正直」で合格することができた。私が合格できた理由は以下のとおりと推測する。
(1)とにかく勉強した。
私が合格するまでの勉強時間は5年間で約2000時間である。その半分は合格した年に勉強している。過去4年間と同じ勉強時間をたった1年でやったわけである。
1年で1000時間勉強すること自体は合格者の中では珍しいことではない。しかし、今までダラダラと生活に支障がない程度にしか勉強していなかったが、心を入れ替えて勉強したことが合格につながったと思う。
合格した年は、テレビや映画は勉強の邪魔になるので2次の口述試験が終わるまで見なかった。
(2)解答を見せ合い議論した。
平成14年12月に「ねくすと勉強会」に入会した。ねくすと勉強会の2次組は、自分の解答を事前に用意し、それを元にみんなで議論するスタイルである。これにより、自分の解答について様々なコメントをもらえたので良い部分と悪い部分を自覚することができた。受験機関は答案にコメントを書いてくれるが、それだけでは不十分である。ねくすと勉強会で事例について議論することにより、悪い部分を自覚でき、それを修正できたことが合格につながったと思う。
議論をしていて一番つらかったことは、「この文章では何を言いたいのか分からない」と言われることだった。自分の考えを否定されるなら議論の余地があるが、書いたことを理解してもらえなければ議論にすらならない。この経験から、誰が読んでも内容が分かる文章を書くことを心がけた。そのため、キーワードは可能な限り使わないようにしたり、書きたいことがたくさんあっても論点を絞って詳しくかつ分かりやすく書くようにした。
(3)アウトプットを十分にやった。
合格した年は2次試験の事例を延べ120題解いた。80分で解いた事例が約80題、時間をかけてじっくり解いた事例が約40題である。解いただけでなく、半数以上の事例は3名以上で議論して知識を深めた。
さらに解いた事例は受験機関が作成した模範解答をすべて写経した(「写経」とは模範解答をそのまま解答用紙に転記することである)。本試験の過去問は6〜7校の模範解答を取り寄せて書きまくった。写経した事例数は延べ200事例を超える。
(4)合格者のセンスを盗んだ。
ねくすと勉強会の合格者は最低1年後進の面倒を見るために勉強会に参加することになっている。複数の合格者へ気軽に質問できる場が用意されている受験生は全国にどれだけいるか? ねくすと勉強会はとても恵まれた学習環境である。私はこの環境を大いに活用し、合格者のセンスを取り入れるようにした。
例えば、合格者へ質問した結果が自分の考えと異なる場合、私は無条件で合格者の意見を取り入れた。合格者は、「中小企業診断士ならこう考えるべきだ!」という感覚を持っている。これを手に入れることが合格への近道である。
また、私はあまり酒は好きでないが、勉強会が終わったあとの飲み会にはできる限りついていった。7月から禁酒したが、合格者の話は聞きたいので酒は飲まずにソフトドリンクを飲んで付き合った。これにより、合格者から個別のアドバイスをもらえたり、勉強会では聞けない本音を聞くことができた。合格者と長く一緒にいると、合格するための考え方というのが見えてくる。
(5)背水の陣で試験に挑んだ。
月300時間以上働くことも珍しくなく、仕事があまりにも忙しくて勉強する暇がないため、会社を辞めるべく上司と交渉をした。ねくすと勉強会で勉強しているうちに、勉強時間さえ確保できれば合格できるという自信がついたからである。
会社は私に辞められると困るということで、試験前2ヶ月間は週1日だけ出勤すればよいということで話をまとめた。たくさん休んだように見えるが、これだけ休んでも年間休日数は週休二日の普通のサラリーマンと同程度である。私はこれまで土日・祝日もあまり休まず、有給休暇も何年も取らずに働いてきたので、まとまった休みを取ることを会社が認めてくれたのである。このように努力している姿を見せれば応援してくれる人はいる。
「勉強時間さえあれば合格できる」と上司に啖呵を切った上、同僚に仕事を振って迷惑をかけ、さらに私がいない間は外注のSEを雇ってもらったので試験に落ちたなら洒落にならないし、恥ずかしくて会社へ行けない。だから必死に勉強した。会社に行かない日は10時間以上勉強した。
試験当日の朝は、「あれだけ勉強したのだから私が合格しないわけがない。これで落ちたなら一生合格は無理だからもう受験はしない。」という気持ちになっていた。勉強の甲斐があって、事例Wを解いている最中に合格を確信し、合格発表が待ち遠しかった。
4.合格のためのアドバイス
以下の4つは、私の経験から会得した合格のためのアドバイスである。私はすべて実行した。
(1)とにかく勉強しろ!
年1回のペーパー試験であるため、たまたま運や体調が悪かったということもあると思う。中にはペーパー試験はクリアしたが、対人恐怖症のため口述試験で落ちてしまったという気の毒な方もいるであろう。しかし、不合格者の大部分は単なる勉強不足である。逆に、勉強をしっかりやれば合格する試験といえる。昨年のねくすと勉強会でも、「それだけ勉強すれば合格するよ。」と言われた人は合格している。
とにかく、「これ以上の勉強できない。ここまでやったなら不合格でも後悔はない。」と自分が納得できるまで勉強をすること。そうすれば合格する。
(2)勉強できない言い訳をするな!
仕事をしているとまとまった勉強時間を確保しづらいし、家庭があると(特に小さい子供がいると)いろいろなイベントやアクシデントがあって勉強に集中できないであろう。しかし、そんなことは勉強をはじめる前から分かっていたことである。それでも診断士試験を受験しようと決めたのはあなた自身だ。だから、仕事や家庭を言い訳にするのはおかしい。合格者だって仕事や家庭をいろいろとやり繰りして勉強時間を捻出している。勉強時間を捻出することも合格に必要な能力のひとつであり、それができないのなら中小診断士になる能力がないということだ。
そもそも本当に勉強時間がないのか? 忙しいと言っているあなたの日々のタイムスケジュールを合格者が見たならきっと、「勉強できる時間ならいくらでもあるじゃん。なんで勉強しないの?」と言うであろう。勉強しない言い訳を探すくらいなら、受験はやめるべきだ。
(3)自分の解答を多くの人に見せろ!
2次試験対策は、知識や解き方のテクニックをインプットするだけでは合格できない。これらを何らかの形でアウトプットし、それを他人に見てもらい、評価してもらう必要がある。これらの作業により、その知識やテクニックが自分の血となり肉となる。それをやらずに他人の知識やテクニックを真似しただけで自分のモノにしたつもりになっているから試験本番で使い物にならないのである。
私は、ねくすと勉強会をアウトプットの場として大いに利用させてもらった。地方に住んでいて周りに合格者や受験仲間がいないならネットの勉強会などに参加して解答を多くの人に見てもらうようにするべきである。多くの人に解答を見てもらえれば様々なコメントをもらえるので、よい書き方や悪い書き方を自覚できる。これらを自覚できなから独りよがりの解答になるのである。
自分の解答を他人に見せることにより恥をかくこともあるかもしれないが、受験生なら間違って当たり前なのだから気にしてはいけない。本当に恥ずかしいのは合格発表のときに自分の番号がないことであり、そのことを分かっていたなら勉強会で恥をかくことなんてたいしたことはない。
(4)本試験より苦しいことをやれ!
本試験より苦しいことをやらずに本試験に挑んでも実力を発揮できない。休日などを利用して定期的に本試験より苦しい勉強の予定を組み、それを実行して体を慣らしておくべきだ。
私は、2次試験当日の朝に1事例解き、昼休み中も1事例解いている。それでも試験終了後はあと2事例くらい解いても平気なくらい余裕があった。試験前2ヶ月間の勉強が非常に苦しかったから、本試験はとても楽だった。試験中に腕が痛くなったり、頭がボーっとするのは単に訓練不足だ。厳しい勉強をしていればそんなことは起きない。
5.多年度受験生のパターン別アドバイス
多年度受験生には3パターンあると思う。
a. 十分な勉強をしていない。
b. 勉強をしているが2次試験を突破できない。
c. いくら勉強しても1次試験を突破できない。
パターンaの方は、勉強しないことに対する罪悪感が麻痺しているので、気持ちを一新するだけでも相当のエネルギーが必要となる。ほとんどの場合、診断士試験に合格しなくてはいけない理由がないため、無理して勉強する必要がないのであろう。
「絶対合格してやる!」という気持ちになり、行動を変えない限り合格は難しい。それをできないのなら何年経っても現状のダラダラとした勉強を続けることになる。合格したいなら、何かをきっかけにして勉強する習慣をつけなくてはならない。
パターンbの方は、経営コンサルタントとしてのセンスがないことが原因と思われる。自分では経営コンサルタントになったつもりで解答を書いているが、内容が一般労働者の現場改善的思考から抜け出ていない場合が多い。経営コンサルタントならもっと高い視点で物事を考えなくてはいけない。その他に評論家風、学者風、中には小説家風のビックリ解答を書く人もいる。
勉強しているのに2次試験に合格しない人は、合格者に解答を細かく見てもらいアドバイスをもらったほうがよい。経営コンサルタントや中小企業診断士としての感覚を身に付ける必要がある。近くに診断士の合格者がいないなら、受験機関の添削や面談などを利用するべきである。
パターンcの方は、この試験に向いていないのであきらめた方がよい。8科目を一度に合格しないといけない試験制度があなたに向いていない。1次試験はいかに苦手科目をなくすかが勝負である。苦手科目を克服するより得意科目を伸ばす方が向いている人もいる。
もう少し勉強すれば合格できると思っているのであればパターンaである。パターンaなら勉強すればいい。
6.最後に
この試験はきちんと勉強すればほとんどの人が合格できる。
私はねくすと勉強会に入会して今までの行動を改めた。行動を改めれば心も改まる。そして、勉強会で知り合った合格者や受験仲間に刺激され、本気で勉強するようになった。私にとって、「受験機関は基礎的なことを教わる場所」であり、「ねくすと勉強会は応用力を試す場所」という位置付けであった。ねくすと勉強会に入会していなければ今もダラダラと勉強を続けていたであろうし、一般労働者的思考から抜け出せなかったであろう。
受験機関には請求されただけの受講料を払っているのだから教えてもらって当然であり大して感謝していないが、何の見返りもないのに勉強に付き合ってくれた勉強会の合格者の方々や一緒に勉強をした受験仲間には本当に感謝している。この気持ちは勉強会の後進のサポートで返すつもりだ。
以 上