1.合格体験記サマリー
この1年に全てをかける
2.初学者向けメッセージ
初学者が1年で受かるためにやるべきこと
3.2次受験者向けメッセージ
定型作業とベタソリューションで受かる!「2次解法ルーチン化」という考え方
4.各論
学習計画、時間管理、モチベーション管理について
1.この1年に全てをかける
私は受験生活に入るに当って、必ず1年間で終わらせることを家族と自分自身に対する契約とした。1年でストレート合格を果たすために何をすべきか、ということについて私の考えを述べたい。
この資格を取るために最も重要なことは、「試験に受かるための勉強をする」という一点に尽きる。この1年間に限っては「本番で得点につながること」だけに集中して勉強するのである。
1次学習はそのボリュームに惑わされること無く、体系的な理解を心がける。経営管理やコンサルティングのどの場面で使うの知識なのか、体系的に理解する。試験としての難易度が上がり、個別知識の暗記に走るだけでは対応が難しくなっている。暗記ではなく、理解して自分の言葉で落とし込んでいくことが重要となる。
2次試験は「制約」をいかに克服するかが勝負である。制限時間の中で問題解決を行い、その解決策を決められた文字数で、しかも推敲の難しい手書き文章で伝えなければならない。この制約こそが、2次試験の難しさの本質である。提示する解決策は平均点レベルでも、制約の中で読み手にストレスを与えない文章で伝えることができれば、それだけで差別化要因となるのである。制約を克服するためには、事例を解くという行為を自分の中で完全にルーチンワーク化するしかない。私はひたすら事例を解き、解答を書きまくることで「ルーチン化」を図った。各社の答練をはじめ過去の本試験事例や2年分の模試、問題集など250以上の事例に取り組んだ。数多くの事例に当ることで、安定的に点をとるための自分なりの事例解法を確立していった。
受験生活中はこの資格を取れば全ての道は開ける、と強烈に思い込むことが必要である。この「思い込み」がものすごいパワーを生む。この1年間の学習を単なる自己啓発の一貫と考えるのと、自分の人生の転機と思い込むのとではリソースの投入の仕方が全く変わってくるからだ。周囲の協力に誠実に応えるためには「自分はこれだけやったのだから必ず受かる」と言い切れるレベルを目指したい。せっかく資格取得という分かり易いインセンティブが目の前にあるのだから、これはむしろチャンスと捉えるべきだ。これまでの人生で無かったくらいの猛勉強ができるチャンスなのである。
2.初学者が1年で受かるために<やるべきこと>
■はじめに
ビジネス人としてもう一段上の地力をつけるためには、この資格が不可欠!そんな強烈な「思い込み」を抱いて受験を決意したのは2002年の10月だった。受験生活に突入するに当り、必ず1年間で終わらせることを家族と自分自身に対する契約とした。SEという職種柄からくる繁忙期の高負荷、家庭を振り返れば遊びたい盛りの我が子の存在など、受験環境は決して有利なものではなかった。以下では、初学者が1年間でこの資格を取得するために「やるべきこと」について自分の考えを述べていきたい。あくまでも私の勝手な考え・思い込みなので、ご参考程度にとどめて頂きたい。
■初学者なら効率追求の1次学習
1次対策は、試験で問われるポイント<だけ>に集中した学習を行った。具体的には以下のことを重視した。
@ インプットは受講中に完了させる
1次講座の多くは座学であるため、つい漫然と聴講してしまう恐れがある。貴重な時間をただ椅子に座って受動的に話を聞くだけで終わらせてはならない。各科目については講義中にインプットを終わらせることを自分に課し、主体的に聴講するようにした。講師の声を聞きながら重要な語句をノートに自分の手で書き付けていく。サブノートなどではなく、ただの殴り書きである。常に手を動かしているせいか、集中力も途切れない。休み時間中や帰りの電車でそのラクガキを見直すと、自分で書いたものなので不思議とアタマに入ってくる。ほとんどフィジカルトレーニングの領域だが、講義内容を長期記憶に定着させる上で非常に有効な方法だった。
A 目的意識をもって復習する
答練や模試では高得点者の名前が掲載されるため、毎回良い点を取って、必ず自分の名前を載せることを目標として復習に取り組む。良い大人がそんなもので一喜一憂するのも恥ずかしいものだが、受験生活中は童心にかえって真剣に高得点を狙う。得点を競い合い、掲載された人のことを心から称えられる学習仲間を作っておくのもモチベーションの維持には有効である。仲間と競い合うというゲーム性を持たせることで無味乾燥な記憶詰め込み学習に対する意気込みも変わってくる。
注意すべきなのは、学ぶことが目的となってしまうことである。1次は知識を問われる試験なので、時間をかけて学習すればどんどん知識が蓄積されていく。これはこれで楽しいものだが、うっかりすると必要以上に掘り下げたり、時間を掛けて精緻にまとめ上げたりして、雑学博士になる人も見受けられる。あくまでも<点を取ること>が目標である。限られた時間を使ったスポット的な学習で良いから、模試・答練などの実戦形式の問題に真剣に取り組み、本番につながる実力を効率的に養っていくべきである。
■初学者だから総力を結集して2次対策
初学者ながら、この資格の主戦場は2次試験と考え、学習開始当初から2次対策を重視した。2次試験はコミュニケーションの制約をいかに克服するかが勝負である。環境分析から解決策導出までを80分で行い、その解決策を決められた字数で、しかも推敲の難しい手書き文章で伝えなければならない。この非日常的な制約のもとで問題解決を行うことが、この試験の唯一の難しさである。
解答の中身はコンサルティングの実務と異なり、何も独創的なアイディアや革新的な方策である必要はない。ムリして解答の中身で差別化する必要は無く、誰もが思い付くような平均的なソリューションを提示してやれば良い。どこで差別化するのかと言うと、その「伝え方」だ。勉強会のディスカッションなどでものすごいパフォーマンスを見せる方が、試験では自分の考えをうまく解答に落としこめず結果を出せなというケースを見てきた。これは「伝える」技術を欠いているためである。
文才を磨きましょうと言っているのではない。一般的な良い文章、うまい文章と<診断士のペーパーテスト的に巧い文章>とは全く違う。このペーパーテストでは、読み手である採点者にラクに理解させる文章構成・表現をしっかり身に付けておけば良い。さらに、どんな状況でもそれを駆使できるよう定着化できれば、このペーパーテストに限っては、ツボは抑えたも同然だ。点につながる解答が安定的に書けるようになる。
私は、「点につながる文章力」を身に付け、それを制約の中で実現できるよう、事例を解くという作業を自分の中で完全にルーチンワーク化することにした。事例を解くというプロセスは一見非定型的な作業に見えるが、実は定型化できる部分が大いにある。事例解法は事例を解くことでしか磨けない。数多くの事例に当り、定型化できる領域を広げていくことがポイントである。
■初学者こそグループ学習で事例漬け生活
言い尽くされたことだが、2次学習においてはグループ学習(勉強会)が有効である。私は「ねくすと」をはじめ複数の勉強会に参加した。毎週課題事例を決めて締切までに解答を発表し、叩き合う。8月以降は勉強会だけで毎週4事例以上やっていた。ほぼ毎日締切がくる状態である。解くべき事例があり、締切が決められていることで、否が応でも事例を解くという作業が日常生活にビルトインされることになる。
近くに学習仲間がいない、勉強会に参加する時間が無いという方でもメーリングリスト(ML)などを活用することで充分な効果が得られる。私も主にML上での議論に力を入れた。ML上で、@期限までに解答をアップ→A期限までに他人の解答に添削やコメントを入れる→Bコメントを踏まえて自分の見直し解答をアップする、というサイクルをひたすら回した。メールの議論では、自分の言いたいことを文字で伝えなければならない。これは本番のコミュニケーション手段と同じである。採点者に伝わる文章技術を高めるには、集まって議論する以上の効果があるかも知れない。だから通信の人も地方の人もネット上で学習仲間を見つけて取り組んで欲しい。
■2次特化型初学者のマイルストーン
細かい学習計画は立てたわけではないが、できるだけ早い時期に自分なりの2次解法を確立したかった。自分の解法を検証して、定着化させていくのに、やはり半年はかかると考えていたからだ。そこで、下記のようなマイルストーンを設定した。
@ 学習開始02年10月〜03年4月末
・どんな事例でも時間内(80分)で解ける自分なりの解法を確立する。
・伝わり易い文章のカタを確立する。
A 03年5月〜03年8月末
・実戦形式の演習で自分の解法・文章のカタを繰り返し検証し、精度を高めていく。
・1日に4事例解くことに耐え得る知力・体力・集中力を身につけておく。
B 03年9月以降
・本番と同じタイムスケジュールで事例演習を繰り返す。
・どの受験機関の模試でも上位10%に入れるような解法を定着化させる。
■初学者だから人の2倍努力しよう
上記のマイルストーンを達成するためにはやはり日々途切れない修練が必要となる。私は日々の学習時間を確保するための手段として、学習時間の計測を行った。時間を費やせば良いというものではないがひとつの目安にはなる。私のように、「人に勝つためには、人の2倍、3倍努力するしかない」というタイプの人には、学習の積み重ねを目に見える形で記していくことは、自信にもつながる。
ただしここで重要なのは、単なる記録に終わらせず、「昨日の自分に克つ」ことを実現するための道具として活用することである。根が<スポ魂系>の私は、前日あるいは前週の<練習時間>を1分でも超えたいという思いで学習に取り組んでいた。こうした思いがあれば、おのずと時間を作り出すことに対して貪欲になる。<1分もムダにしたくないという思い>が、ありとあらゆるスキマ時間を捻り出し学習時間を確保するための強力なドライブとなる。
■初学者だから、この1年は「受かるための勉強」に全てを懸ける
初学者が1年間でこの試験に受かるために最も重要なことは、「試験に受かるための勉強をする」、という一点に尽きる。当たり前のことのように聞こえるかもしれないが、これが出来ない方は多い。受験生の中には、ただの受験勉強に終わらせたくないので、興味のある科目ごとに掘り下げた学習や異業種の方々との交流を図りながら合格を目指すという方もいると思う。それはそれで意義深いことだ。だが、働きながら取得されている方にはお薦めできない。この資格が欲しいならこの1年間は資格を取ることだけに集中すべきだ。自己啓発気分で取り組んでいたら、結果として必ず取得までに数年を要することになる。
学習に拡がりを持たせたり、人脈を作ったりということは診断士に受かってからでもできる。むしろ受かった後の方がそうした機会は増えるはずだ。だから、この1年は目の前の課題であるペーパーテストに受かることに集中したい。得点に直結することだけをやれば良いのである。
そして受験生活中はこの資格を取れば全ての道は開ける、と強烈に思い込むことが必要である。この「思い込み」がものすごいパワーを生む。この1年間の学習を単なる自己啓発の一貫と考えるのと、自分の人生の転機と思い込むのとではリソースの投入の仕方が全く変わってくるからだ。周囲の協力に誠実に応えるためには「自分はここまでやったから必ず受かる」と言い切れるレベルを目指したい。良い大人が、たかがペーパーテストにどこまで本気でリソースを注ぎ込めるか、合否を分けるのは間違いなくそういうところである。
3.定型作業とベタソリューションで受かる!「2次解法ルーチン化」という考え方。
■はじめに
1次試験の難度が上がったとはいえ、診断士資格取得の主戦場はやはり決勝戦である2次試験である。私は2002年10月に学習を開始した初学者だったが、当初から2次対策にフォーカスした学習を続けた。初学者が1年で2次試験に合格するためには何をすべきか、について自身の経験をふまえて考えを述べたい。
■制約下における問題解決力と意思伝達力
2次試験はさまざまな「制約」をいかに克服するかが勝負である。試験では80分という限られた時間で環境分析から解決策導出までを行う。さらに、その解決策は指定された文字数で、しかも推敲の難しい「手書き文章」で伝えなければならない。この非日常的な制約こそが、2次試験の難しさの本質である。導いた解決策がたとえ平均点レベルでも、これらの制約のもとで読み手を疲れさせない意思伝達ができれば、それだけで差別化要因となる!まずはこのことをしっかりと意識しておくべきである。
■3つの「ルーチン化」で制約を克服する!
この「制約」を克服するために、私は事例を解くという行為を自分の中で完全にルーチンワーク化することを目指した。「ルーチン化」とは、
@解法(解き方・タイムマネジメント)
Aソリューション(解答の中身)
Bコミュニケーション(解答の伝え方)
について定型化し、制約のもとでも安定的に、機械的に点の取れる標準作業を定着化させることである。
■解法を定型化・定着化させる!
まずは自分に合った事例の解き方・タイムマネジメントを確立することが必要である。参考書、問題集、受験機関の2次講座などで様々な解法が紹介されている。これらを参考にしながら、方向性をハズさずに一貫性のある解答を迅速に構成できる有効な手法を確立させる。15年度本試験でも、「単なる個別解決策の集合」ではなく、「個別解決策が統合され、事例企業の未来が明確に伝わる、方向性と一貫性のある解答」を書くことが合否を分けた。
もちろん最初からひとつの方法に固執せず、多様な方法論の中から優れたものを選択・組合わせて、自分に合った解法を確立すればよい。私の場合は、数多くの事例に取り組む中で各手法の「いいとこどり」的なメソッドを創り上げた。こうして修得した解法を分単位で規定して標準作業化し、実戦を通して定着化させる。もちろん必要に応じて見直しを図り、精度を上げていく。事例解法は「事例を解くこと」でしか磨かれないのである。
■ベタ・ソリューションを貯めまくる!
解答の中身については平均点レベルのソリューションで充分である。独創性や革新性を追求し過ぎると、素直な解答が書けなくなる。診断士のタマゴに対して作問者が期待しているベタなソリューションを素直に提示すればよい。ただし、どんな事例企業がきても、平均点ソリューションを迅速に適合できるよう、その蓄積を貪欲に行う必要がある。
私はソリューションのストックのために、事例を解いて見直しを行ったら、その解答・解説をすぐにまとめることを心掛けていた。「サブノート」というほどのものではない。単なる「写経」に近いが、「こういう問い掛けに対して、こういう解答を作問者が求めていた」というところを備忘録的にまとめただけのものだ。
体裁や綺麗にまとめることにこだわらず、スピード重視で自分の手でまとめ、折に触れてそれを「読経」することを継続した。自分の持ち駒を常に確認するのだ。こうした地道な作業を通して、ペーパーテストに活用できるソリューションが確実に蓄積されてくる。中小企業が抱える問題は本質的にはいくつかのパターンに類型化できる。与件内のメッセージを読んだだけで、こうした個別課題に対する解決策の候補をスムースに取り出せるようにしておくことが重要なのである。
■読み手にラクに理解させる文章力を鍛える!
2次試験の答案の差別化はコミュニケーション力に掛かっていると考える。ただし、文章の巧さということではない。読み手を疲れさせず、スピーディに理解してもらえる解答を書く力のことである。ここでは構成力と表現力の強化が鍵になる。
構成力を高めるには、ピラミッドストラクチャやMECEなどロジカルシンキングの原則を踏まえた「文章のカタ」を確立させることが重要となる。推敲の難しい手書き文章で、自分のロジックをわかりやすく伝える文章を迅速に構成するには、「文章のカタ」は不可欠である。
一方、表現力を高めるためには、とにかく他人に解答を見てもらうしかない。グループ学習でお互いに解答を添削することは有効な手法のひとつである。まず他人に見せるレベルを目指して推敲を重ねる。他人からのコメントをもとに再度推敲を重ねる。こうしたサイクルを繰り返すことで「読み手への伝わり易さ」を意識して、表現力を高めていくことができる。
相互添削を目的とした議論を行う際には、知識の正確性やキーワードの有無だけにこだわるのではなく、採点者への伝わりやすさを重視した検証を行うべきである。検証のための具体的な論点を一部を挙げておく。
(1)結論は聞かれたこと(題意)に答えているか。
(2)列挙した論拠や具体策は結論をしっかりサポートできているか。
(3)論拠や具体策はMECEに展開され、かつ与件に即したものか。
■最後に
非定型的な知的作業の連続となるコンサルティング実務と異なり、2次試験は定型作業の組合せと標準レベルのソリューションで対応することができる。だからコツコツと努力しさえすれば<誰でも・必ず>合格することができる。ただしその定型作業を自分の中で完全に定着化させ、さまざまな「制約」のもとで円滑に行えるレベルにまで高めるためには、やはり日々途切れのない修練が必要となる。これにはもう量稽古しかない!
実務にも応用できる基礎的なソリューションの修得、コンサルタントとしての意思伝達力の向上など、この修練を通じて得られるものは大きい。資格取得を目指すということは、こうした修練に取り組むインセンティブが自分の中で明確化されているということである。こうした環境を大きな<機会>と捉えて、この1年間は惜しみなく努力すべきである。
4.各論
学習計画、時間管理、モチベーション管理について
■はじめに
私の資格取得の動機は極めて明確だった。
今後やりたい仕事をするために、進むべき道に進むためにどうしてもこの資格が不可欠と確信していた。数年前から機会を窺っていたが、業務や家庭のことを考えると今年こそがそのチャンスと思われた。必ず1年間で終わらせることを家族に誓い、失敗したら再チャレンジは無いことを自分自身に対する契約とした。こうして退路を断ち、2003年10月より受験生活に入った。
■学習環境
仕事・家庭について:私の職種はネットワーク系のSEである。通信キャリアのSI部門に所属しており、現在は顧客内に常駐してネットワークの企画・設計を行っている。家庭には妻と3歳になる長女がいる。仕事の特性からくる繁忙期の負荷や、遊びたい盛りの我が子の存在など、決して受験には有利な環境とは言えなかった。
こうした環境で学習を継続していくためには、何よりも時間を創り出すことが不可欠だった。私の場合、毎朝4時台に起床して早朝時間帯を学習に充てた。通勤時間や昼休み、日常の僅かなスキマ時間も全て学習につぎ込んだ。結果的に自分でも驚くほどの未利用資源=時間を開拓できた。どんなに忙しいと思っていても必ず未活用の時間帯があるものだ。まずはライフスタイルの棚卸をして未利用時間を再開発することが重要である。
受験機関について:企業経営通信学院の初学者コースに通学した。
グループ学習について:ディスカッション形式の2つの勉強会に参加した。一つは受験機関のクラス内で発足した勉強会、もう一つはこの「ねくすと勉強会」である。私が1年でストレート合格できたのはこれらの勉強会によるところが大きい。
■私の学習法
1次学習について
1次試験は科目数が多いため、通学されている方は受験機関のカリキュラムなどをペースメーカーとするのが効率的である。各科目について「予習→受講→復習」のサイクルを繰り返していった。
予習は1次試験過去問の通読を行う。これにより各科目の試験で問われるポイントを意識しながら受講することができる。
また受講中にインプットをしっかりやることを意識した。受験機関の講義はいわゆる座学であるため、漫然と聴講してしまう恐れがある。貴重な時間を受動的に話を聞くだけで終わらせてはならない。各科目のインプットは講義中に完了させるという意気込みで臨み、講義の時間を有効に活用することを心掛けた。 また各科目の最終日など節目ごとに行われる小テストでは、常に上位に入ることを目標として復習に励んだ。得点を競い合い、努力を称え合う学習仲間を作っておくと復習にも真剣になれる。
1次はとにかくマークシート形式の試験に慣れることを重視して、様々な実戦形式の問題に当った。問題文の読み方、選択肢の絞り方、効率的な解答順番などテクニックに走ることも必要である。私は問題集や模試を時間内で解く→間違った箇所をテキストに戻って調べ、正しい知識をインプットする→時間を置いて再度解く、というサイクルを何度も繰り返した。問題集や模試の中で、プロが予想する「本番で点につながりそうなポイント」だけに集中して掘り下げていく学習を続けた。
2次対策について
2次試験はさまざまな「制約」をいかに克服するかが勝負である。試験では80分で環境分析から解決策導出までを行い、その解決策を決められた文字数で、しかも推敲の難しい手書き文章で伝えなければならない。この非日常的な制約こそが、2次試験の難しさの本質である。この制約の中で、落ち着いて解決策を導き、読み手にストレスを与えない文章で伝えれば、それだけで差別化要因となるのである。まずはこのことをしっかりと意識しておくべきである。
この制約を克服するためには、事例を解くという行為を自分の中で完全にルーチンワーク化するしかない。私はひたすら事例を解き、解答を書きまくることで「ルーチン化」を図った。平成7年度から14年度までの本試験事例、前年度(14年度)の模試、答練、市販問題集、15年度の各校の答練・模試、市販の問題集など250以上の事例に取り組んだ。事例を解くことが食事を取るのと同じくらい自然な行為になるまでやった。こうして数多くの事例に当ることで自分自身の事例解法を確立していった。
また読み手にストレスを与えない解答を書くためには、文字によるコミュニケーション能力を高めなければならない。これを磨くためには、他人に解答を見てもらうことが最も有効である。勉強会では自分の作った解答を積極的に他人に見てもらうことを心掛けた。解答を作り、他人からコメントをもらう。コメントをもとに再度推敲を重ねる。こうしたサイクルを繰り返すことで文章力を高めていくことができた。
近くに学習仲間がいない、勉強会などに参加する時間が無い方という方にはe−groupなどのメーリングリストの活用をお薦めする。我々は上記のプロセスをメーリングリスト上で、公開ディスカッション形式で実施していた。メールでは自分の伝えたいことを文字にして相手に伝える必要がある。2次試験に必要な文章力を磨くためにも、メーリングリスト上の勉強会は有効である。
■合格に向けたスケジュール
私は特に細かい学習計画は立てなかったが、初学者が確実に1年間で合格するためには、量的にもかなりの学習が必要と感じていた。目標とする学習時間を設定し、これを達成するために学習時間の計測・記録を行っていった。「昨日の自分に克つ」ことをテーマとして、前日や先週の学習時間を1分でも超えたいという思いでやることが重要である。こうした思いがあれば、自然と学習時間が増えていく。時間というものに対して貪欲になるため、1分1秒もムダにせずにスキマ時間を捻り出し学習時間を確保することができるようになる。
では、具体的に年間のスケジュールを詳述していく。
@2003年10月(学習開始)〜12月
1次学習について:この時期は受験機関の授業をペースメーカーとして各科目を淡々と学習していった。この他に毎日財務の問題演習を一定時間行う、2次試験にシナジーのある生産管理などを先行的に学習する、などの取り組みを行った。
2次対策について:この時期は新制度(13、14年度)の本試験過去問題に取り組んだ。まずは必ず80分で解く。もちろん初学者ならこの時期では全く太刀打ちできない。しかし80分の感覚は1年間かけて体に叩き込んでいく必要があると考え学習開始当初から80分という時間にこだわった。これと並行して過去3年分の中小企業白書(00年、01年、02年)に掲載されている事例を200字で要約するというトレーニングを行った。これを通して自分なりに200字論文の「カタ」を確立させた。殆どフィジカル・トレーニングの領域だが、こうした学生時代の部活動のような基礎訓練が後々効いてくるのである。
A2003年01月〜03月
1次対策について:受験機関では運営管理、経営情報システム、経営法務など暗記が必要となる科目を学習する時期である。知識を定着させていくためには、毎日少しずつで良いから継続的にインプットしていくことである。土日に何時間も使って一気に憶え込んでも時間が経てば綺麗に忘れてしまうものである。毎日数十分で良いから継続的にインプットしていくことが有効である。これが無理なく長期記憶を形成していくポイントである。
2次対策について:この時期は過去6年分の旧制度本試験事例、前年度発売の2次問題集に取り組んだ。特に生産事例が苦手な人は旧制度鉱工業事例の生産改善事例を重点的にやっておくと効果的である。さまざまな事例に取り組み、その解答・解説を自分なりにまとめていくことで他事例の解答に応用できるソリューション(解決策)の蓄積を進めた。
B2003年04月〜06月
1次対策について:4月頃から開始される各社の1次模試を中心に学習を進めた。1次模試は会場受験にこだわる必要は無いが、自宅で受験する場合は本番と同じタイムスケジュールで取り組むべきである。休み時間の使い方なども自分なりに研究しておくことも有効である。
2次対策について:より実践的な力を磨いていく時期である。前年度の模試、各予備校の2次コース答練などを積極的にこなした。とくに5月の連休などでまとまった時間が取れるため、本番さながらに1日4事例を立て続けにやるという演習を行った。これも慣れておかないと、最後まで集中力や思考能力を維持することは難しい。
C2003年07月〜10月
1次学習について:本試験の1週間前からは2次学習を中断し、1次突破に特化した記憶マシーンとなった。受験機関の答練や各校の1次模試の解説を縮小して携帯し、あらゆるスキマ時間を使って繰り返し読んでいた。ちょうど仕事が忙しくなり体調を壊したが、病院で点滴を打っている間も模試の解説を眺めていた。
2次学習について:7月頃から周囲では1次対策が本格化してくるが、それに流されず毎日最低1事例を解くことを継続していた。私の場合1日でもブランクを作ると勘が鈍る気がしたためである。1次試験が終わる8月以降は文字通り2次学習に全てを集中させる。8、9月は1日3〜5事例をコンスタントにこなしていった。結局試験の直前まで新しい事例を解き続け、どんな問題が来ても「いつも通りのやり方」で「落ち着いた解答」が書けるレベルに持って行った。
1日の学習スケジュール
ご参考までに、2次試験直前期の1日の学習スケジュールを紹介する。
04:30〜07:30
起床後まずは財務事例を80分で解く。20分で財務事例の解答・解説を通読する。その後80分で朝2本目となる事例を解く。財務以外の事例を解く。
08:30〜09:20(通勤時間)
電車内で1本目の財務事例と2本目の事例の解答・解説を熟読する。勉強会の課題提出日の場合、この時間で自分の解答の推敲を行う。
12:00〜12:50(昼休み)
朝解いた2つの事例のポイントや模範解答の中で使えそうな言い回しなどをノートにまとめる。体裁などにはこだわらず、解答作成時の記憶が残っているうちにスピード重視で行う。(添付資料参照)
18:30〜19:30(電車内)
直前期は出来るだけ定時で仕事を切り上げる。電車内では昼休みに作成したサブノートを繰り返し黙読し、ソリューションとして定着させる。
19:30〜21:00(地元の図書館)
自宅に帰る前に図書館の学習室に必ず立ち寄り、その日3本目となる事例を解く。
22:00〜23:00
図書館で解いた事例の解答・解説を通読。ポイントをノートに書き出す。
24:00 就寝
■仕事・家庭と学習を両立させるために
受験生活中は資格を取れば全ての道は開ける、と強烈に思い込むことが必要である。この「思い込み」がものすごいパワーを生む。この1年間の学習を単なる自己啓発の一貫と考えるのと、自分の人生の転機と思い込むのとではリソースの投入の仕方が全く変わってくるからだ。
家族には、一生を掛けた勝負に出ていると思ってもらうことが必要だ。私の場合、年末・年始、GW、盆休み、2次試験直前期などは妻子に実家に帰ってもらい、独りで学習に集中した。家族にも大変な緊張を強いる毎日だったが、常に「こんなことは必ず今年で終わらせなければならない」という覚悟で学習に取り組んでいた。
仕事に対してはより短時間で集中的に取り組み、効率を高める必要がある。限られた時間の中で仕事の質を保つには自らの処理能力を向上させる必要があり、これは2次の問題解決プロセスにも応用できる。
■これから受験する方へのアドバイス
この試験に受かるために最も重要なことは、「試験に受かるための勉強をする」という一点に尽きる。本番で得点につながることだけに集中して勉強するということだが、これが出来ていない方は意外に多い。この資格が欲しい方は、この1年間は資格を取ることだけに集中すべきだ。自己啓発気分で取り組んでいたら、結果的に取得までに数年を要することになり、その分だけ仕事にも家族にも迷惑を掛ける恐れがあるのだ。
科目ごとに掘り下げた学習を行ったり、異業種の方々と人脈を作ったりということは診断士に受かってからでもできる。むしろ受かった後の方がそうした機会は増えるはずだ。だから、この1年は目の前の課題である「試験に合格すること」だけに集中すべきだ。何をやれば2次試験で点につながるのかという得点感覚はやはり事例を解きまくることで身に付いてくる。
2次試験については、「どんなに勉強したからといって受かるものではない」、という声を良く聞く。私自身はそうは思わない。2次試験もコツコツと学習を積めば、確実に得点できるようになるし、必ず合格できる。1年間毎日欠かさず事例を解いていれば、模試では常に上位5〜10%に入るようになるし、本番でどんな事例が来ても安定的に力が出せるようになる。
また逆に「大して勉強してないけど受かっちゃった」という方もいる。確かに相性、時運などで大して勉強せずとも本番事例で結果を出せる方もいる。しかし、勉強せずに実務経験やセンスだけに頼って合格を目指すというのは不確実な方法であり、学校に通ったり、家族から大切な時間を借りるなど大きな投資を行っている我々とっては非常にリスクの高いやり方である。
周囲の協力に誠実に応えるためには「自分はこれだけやったから必ず受かる」というレベルを目指したい。せっかく資格取得という分かり易いインセンティブが目の前にあるのだから、これはむしろチャンスと捉えるべきだ。人生で無かったくらいの猛勉強ができるチャンスなのである。
私自身も資格取得以上に、自分の中にある未利用資源を開拓できたこと、仲間とともに1年間で250以上ものケーススタディに取り組み実務につながる知識を修得できたことが今後も誇れる大きな成果と考えている。
最後に、皆さまが診断士学習を通して、人生における有益な時間を過ごされることを心よりお祈り申し上げます。