前回から引き続き、平成25年度事例Ⅰ、第5段落です。
⑤今でこそ、本社の近隣に 100 名近いオペレーターからなるコールセンターを構えるようになったが、サプリメント販売を始めた時は、社長夫妻を含めて社員はわずか10名程度であった。今日同様、そのほとんどは非正規社員であったが、電話やFAXによ る注文の受付、商品に関する問い合わせの対応、商品の梱包・発送、宣伝広告用折り込みチラシや荷物に同梱する説明書の作成に至るまで、全員で日々の業務をこなしていた。しかし、X社から提供されたと同様の健康の維持・増進向けのサプリメントに注目していたのはA社だけでなく、知名度が高い大手メーカーをはじめ、多くの企業がこの市場に参入してきたために競争が激しくなって、A社の売上は思うように伸びなかった。
この段落の書き始めから、現在の事例企業は100名近いコールセンターを抱える規模に成長している姿が伺えます。しかし、サプリメント販売を始めた頃は、たった10名程度の小さな会社で、業務に関するあらゆることを社員全員でこなしていました。しかし、健康維持・増進向けサプリメントに注目する多くの企業の参入による競争激化で、事例企業の売り上げは伸びなかったとあります。
以前、本事例のサプリメント業界は参入障壁が低いと解説しました。事例企業も、大手メーカーを含む多くの競合の前に苦戦を強いられたのでしょう。つまり、10人程度の小さな家内制手工業的な企業形態では、数多い競合相手に生き残りが難しかったはずです。しかし、事例企業はこの危機を乗り越えて、現在まで生き延び成長してきました。なぜそれが可能になったのでしょうか。その鍵は次の段落以降で明らかになります。
この段落は短いですが、単に事例企業の過去の苦境という事実としてだけで捉えるのではなく、現在の状況との比較しながら読み解いてみましょう。そうすることで事例企業の真の強みや問題点、課題のメカニズムを考察できるようになります。
次回は、第6段落に参りましょう。