2016年 コラム・つぶやき 勉強法(一次試験) 組織人事

インテリジェンスとして理解するための読み方(9)

仕事が忙しく、なかなか更新できずにいました。申し訳ありませんでした。
今回は、前回から引き続いて、平成25年度事例Ⅰ、第3段落からです。

③これらサプリメントは、必ずしも、薬局やドラッグストア、コンビニエンスストアなどの店頭だけで販売されているわけではなく、通信販売やeコマースを通じて一般消費者に届けられている。そうして提供されるサプリメントを、研究開発から生産・販売まで自社で手がけている企業は数少ない。業界の大半を占める中小企業は、商品企画を自社で行っているとしても、実際にサプリメントを開発しているわけでも、巨額の設備投資を行って生産しているわけでもない。中小企業が提供するのは、いわゆるOEM (相手先ブランド生産)商品であり、A社の商品も同様である。
④1990 年代の半ばに創業したA社は、初め、近隣県産の特産品の通信販売を営んでいた。A社がサプリメントを扱うようになったのは、現在の主要委託製造先であるX社から販売を依頼されたことがきっかけである。特産品販売の売上が思うように伸びず、いかにして事業を拡大させるかを考えていたA社にとって、サプリメントを少量でも供給するというX社からの提案は、受け入れやすいものであった。というのも、以前からA 社社長は、高齢化に伴い、団塊シニアを中心とする中高年層に健康の維持・増進向けのサプリメント市場が成長するかもしれないと考えていたからである。

第3段落では、サプリメント業界の概況が説明されています。ここで読み取れるのは、①サプリメントの販売チャンネルの広さ(店頭販売から通信販売、eコマースまで)②サプリメント市場に参入している中小企業は、他の製造業者から供給されるOEM製品を商品としている③業界の大半は中小企業である④業界の中小企業は商品企画はする(かもしれない)⑤サプリメントの生産には巨額の設備投資が必要である、という情報です。これらの情報から、サプリメント業界の構造をファイブフォースモデルで整理してみましょう。
業界内の競争ですが、大小合わせて多くの業者が参入している市場ですので、競争は激しいと言えるでしょう。新規参入についても、多くの業者の参入があることから、生産を伴わない限り参入障壁は低いと言えます。代替品の脅威については与件に示されていないので、ここでは考慮の必要性は高くないと思います。鍵になるのは、残りの売り手の脅威と買い手の脅威です。えっと思われるかもしれませんね。
ここでの売り手とは、事例企業のような中小企業にとっては、OEM製品を供給してくれるX社のような業者です。こうした業者との関係を良好に保つことが、売り手の脅威を低くするポイントになります。また、買い手の脅威とは、他の競合相手の商品に浮気しかねない消費者でしょう。競合が多い市場で提供される商品やサービスはコモディティ化しやすくなります。価格以外の価値で顧客を長く引きつける施策が求められそうです。これらを組織人事の観点からどのように実現するかが問われているという仮説が立てられます。
第4段落は、事例企業のこれまでの経緯について触れています。事例企業は、近隣の特産品の通信販売をしていましたが、少量でも製品を提供するというサプリメント製造先からの提案を受けて、サプリメントの取り扱いに乗り出しました。その背景には①特産品の通信販売の売り上げが伸びなかったこと、②社長に事業拡大の意欲があったこと、③社長が中高年層の団塊世代顧客をターゲットとするサプリメント市場が成長するという読みがあったこと、があります。
ここでもいくつか気になることがあります。例えば、なぜ事例企業は取り扱う商品を、特産品からサプリメントへと大きく変化させたのでしょうか。そして、そのような大幅なビジネスチェンジがなぜ実現したのでしょうか。それらについて考える際には、取扱商品が変化したとしても利用可能な事例企業の資源は何だったのかを意識する必要があります。まだまだ考察すべき問いはありますが、それはみなさんにお任せします。わずかな与件分の情報から、いかに多くの問いや仮説とその答えを作り出せるかが、正解に直接的に結びつく情報が少ない事例Iの戦いを左右します。

次回は、第5段落から始めます。

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