与件の整理も、どこかシリーズ物のようになってしましました。今回は、問題を受けて設問の何に答えるかについてお伝えします。
受験本を読むと、「与件文と問題を紐付けて」と書かれている場合があります。与件文の「ここ」が第何問に使えるといった感じでしょうか。たしかにそうですが、受験勉強をしていて常に気になっていたのが、まさにこの「紐付け」のところです。紐付けた内容と問題で問われていること、また、与件の内容どうしを結びつける「何か」を発見することこそが重要ではないかと思えるようになったのです。
例えば、問題で「人事面での社員のモラール低下の背景について記せ」と書かれており、与件文には「同一職級の社員の間で、評価の違いに不満が出ている」とあるとしましょう。このとき、単に「公正な基準により人事評価されていないこと」が答えになるかというと、その可能性は低いと思います。なぜなら、「公正な基準により人事評価されていないこと」がなぜ発生しているのかについての分析がなされていないからです。
ここで、与件文に「人事評価は創業者の社長とその弟である専務だけで行われている」とあるとするとどうなるでしょう。「人事評価が経営陣の一部だけで行われていること」が背景といえるでしょうか。また、先ほどの論点と組み合わせて「人事評価が経営陣の一部だけで行われており、公正な基準で人事評価されていないこと」とするとどうでしょうか。ここからが二次試験の本質の部分になります。例えば、創業当初のように事業規模が小さく、社長と専務が社内のすべてを掌握できていたとすれば、二人だけでの人事評価が可能だったのでしょう。しかし、時が過ぎ、事業規模が大きくなると、社長と専務の二人だけでは、社員すべての業績を評価することが難しくなるでしょう。そのようなシチュエーションが与件文に記されていれば、解答は「企業規模の拡大に合わせた、公正な人事評価基準を定めてこなかったこと」が解答かもしれません。この解答は、「人事評価が一部の社長と専務だけで行われていること」と「公正な基準で人事評価されていない」をつなぐ「何か」であり、事例の分析力が問われるところだと思います。
「与件の抜き書きと組み合わせ」の解答と、「分析を反映した実のある」解答との差は、こんなところに出てくるのではないでしょうか。