5つの「イオン」で事例企業を理解するの実践編、最後となる5回目は「Reflection」です。
Reflectionという言葉の意味は、「反射」のほか、「熟考、反省」があります。ここでのReflectionの意味は後者です。つまり、Actionの結果を分析・考察して、次なる活動につなげる仕組みや体制が整っているかという視点です。PDCAのCAにあたるものですね。
なぜこの視点が必要なのでしょうか。その理由は、Reflectionを通じ、組織がActionの経験を形式知化し、組織全体の共有知として活用できるからです。その体制が整っていない会社では、社員の活動の結果や教訓が、社員個人の範囲で止まってしまいます。その結果、会社は将来の成長のシーズを見逃したり、あるいは知らない間にリスクが大きくなって会社の経営を阻害するような事態につながる恐れがあります。
平成27年度事例1では、事例企業が、ゲートボールやグラウンドゴルフなど、シニア事業で培った知識・経験・ネットワークを活かせると分析したことから、スポーツ用品関連事業を健康ソリューション事業に位置づけるという決断ができました。つまり、これまでの活動の結果を共有知とし、さらなる成長のシーズを明確化できたということです。これは事例企業の明確な強みでしょう。
Reflectionが重要になるのは、むしろ事例2や事例3でしょう。事例3では、例えば平成25年度のように、CADの部品がライブラリ化されていないとか、CADの使用方法が標準化されていないといった、Reflectionの視点での問題点が記述されています。また、顧客からの問い合わせにタイムリーに対応できないという状況が放置されているのは、事例企業が組織として学習できていないという大きな弱みでしょう。
Reflectionの視点は、一般的な戦略策定プロセスの中ではあまり重要視されていないと思います。しかし、この視点無くして、事例企業の将来的な発展は望めません。Reflectionが欠けている事例に遭遇した場合、どうすれば事例企業の経験を企業全体で共有できるかについて考えてみてください。