2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 組織人事

インテリジェンスとして理解するための読み方(11)

今回は、平成25年度事例Ⅰ、第6段落です。

⑥A社の業績が急速に伸張し始めたのは、2000年代半ばに、X社と共同して企画した、骨・関節サポート向けサプリメントへの絞り込みを決断してからである。競合他社に先駆けてこの商品を発売したこともあって、折り込みチラシ中心の宣伝広告で売上が徐々に伸び始めた。売上規模が拡大し少しでも資金に余裕ができるようになると、折り込みチラシ広告だけでなく、テレビCMのスポット広告やネット広告などの様々な宣伝広告を積極的に活用して、市場での認知度を高める施策を講じた。その結果、取り扱い件数が増加すると、ICT専門業者に顧客データベースの構築を外注しただけでなく、それ まで自分たちでこなしてきた、商品の梱包、発送などの業務も外注し始めた。ただし、 宣伝広告については、広告代理店任せにするのではなく、これまで蓄積してきたノウハ ウを駆使してA社が主導的に行っている。

この段落からは、事例企業の急速な業績伸長が、X社と共同開発したサプリメントへの「絞り込み」の決断から始まったことが分かります。取扱商品を「絞り込んだ」ということは、以前は多種多様な商品展開をしていた可能性が考えられます。なにせX社は少量でも商品供給してくれる会社ですから。それではなぜ事例企業は取扱商品の絞り込みを決断したのでしょうか。以前は多様な商品展開をしていたとするならば、決断前の事例企業の状況が商品の絞り込みを必要としていた可能性があります。また、商品の絞り込みには、明確かつ正確な標的顧客の設定が不可欠です。なぜ事例企業はそうした顧客設定ができたのでしょうか。与件文を読みながら、こうした問いとその解を常に考えていくことが大事です。

さて、売り上げを安定的なものにするために、そうした標的顧客の新規開拓や関係性の強化も必要になるでしょう。新規顧客の開拓は、折り込みチラシの宣伝広告が功を奏しました。その結果、事例企業の売り上げ規模が拡大し資金の余裕ができたことから、事例企業はテレビCMやネット広告など様々な宣伝広告で知名度を向上させました。知名度の向上に合わせて、様々な業務の外注化を始め、その中には設問にもある「ICT専門業者への顧客データベース」構築の発注も含まれます。しかし、宣伝広告については「広告代理店任せにせず」、これまで蓄積してきた事例企業のノウハウを駆使して「主導的」に実施しています。

ここで、なぜ「広告代理店任せにせず」と「主導的」を強調するのでしょうか。その理由は、広告宣伝が事例企業の競争優位性を支えるコア・コンピタンスと考えられるからです。もっと踏み込んでいえば、VRIO分析でいえばVRIOのすべてを満たすコンピタンスであるともいえるでしょう。事例企業独自の広告宣伝により、新規顧客開拓と標的顧客との関係性強化が実現できていたのでしょう。事例企業が具体的に何を行っていたかは与件文からは伺えませんが、広告宣伝による標的顧客の開拓、標的顧客との関係性強化が、前回の解説で触れた厳しい競争環境の中で事例企業が生き延びてこれた要因であるという仮説を立てることができます。この仮説に加えて、設問にある「勤務経験のある中高年主婦オペレータ」という要因を重ね合わせれば、この事例企業にとって不可欠な戦略は何か、その戦略実行のために組織・人事面からどのような施策を実行しなければならないかというアプローチが見えてくると思います。また、ICT業者に発注した顧客データベースが新商品開発に必ずしも結びついていないという問題点も、上記の仮説から考察すると、その理由がいくつか見えてきます。細部は皆さんでお考えください。

次回は第7及び第8段落です。

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