2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 組織人事

インテリジェンスとして理解するための読み方(5)

前回に引き続き、平成25年度事例Ⅰ第2問です。今回は、設問2です。

第2問(配点 35 点) A社の従業員の大半を占める非正規社員の管理について、以下の設問に答えよ。

(設問2) A社のオペレーターの離職率は、同業他社と比べて低水準を保っている。今後、その水準を維持していくために、賃金制度以外に、どのような具体的施策を講じる べきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ。

リード文の解説は省略します。設問2では、講じるべき具体的施策について助言するよう求められています。また、中小企業診断士としての助言が必要です。「講じるべき」ですから、社長にやってもらわないといけない「必須の」ことであり、当然実行可能な内容でなければなりません。具体的施策ですから、施策は言われてすぐイメージできるほど詳しいものであるべきです。中小企業診断士としての助言ですから、診断士としての専門性と知識に裏打ちされた助言が求められています。
それでは、設問の条件について見てみましょう。「A社のオペレーターの離職率は、同業他社と比べて低水準を保っている」とありますから、事例企業は従業員にとってとても働きやすい場所なのか、事例企業は離職率を下げる何らかの人事的施策をすでに実行しているのか、といった問いを立てることができます。ここではどちらの問いもそのまま立てておきます。
次に、「今後、その水準を維持していくため」とありますが、この部分をどのように解釈すればよいでしょうか。まず言えるのは、事例企業が今後もオペレータの離職率を低く維持したいという意図があるということです。この部分と、先の設問1の内容を組み合わせると、事例企業はオペレータを、「少々高い給料を払っても長く働いてもらいたい」従業員だと認識しているといえるでしょう。さらに、設問1の解釈で、オペレータが事例企業の競争力の源泉であるという仮説を立てましたから、これら二つを組み合わせると、設問2では、事例企業の競争力として、オペレータに長期にわたり勤めてもらうためのインセンティブを高めるための施策が問われていると理解できます。
ここで、皆さんは少し違和感を感じませんでしたか?一般的に、非正規社員は短期的な労働需要を満たすための存在であり、長期雇用を前提とした制度ではありません。現実には、非正規の状態で雇用契約を繰り返すことで、実質的には正規社員と同様な雇用形態にする例もありますが、一般的には「雇いやすく辞めさせやすい」労働力が非正規社員です。しかし、事例企業は非正規社員をオペレータとして長期雇用したいと考えています。良く言えば非正規社員にも優しい会社ですが、悪く言えば、正規社員と比べて低い給与水準で継続雇用したいという「虫の良さ」が見えます。では、社長は「いい人」なのか「ズルい人」なのか。それは与件を読んで得られる事例企業の方向性と戦略から判断することになります。そのためには、小売業である事例企業が、これらのオペレータを使って、「誰に、何を、どのように」販売し成長すべきかという方向性を明確にします。そして、良い人なりにまたはズルい人なりに、そこには方向性に沿った経営をするための何らかの狙いがあるはずだという問題意識を持って与件読みに臨むことです。それにより、与件からの情報収集のポイント設定や、解答ロジックの構築が容易になります。
何度も繰り返しますが、単に情報(というよりデータ)を集めるだけの与件読みでは不十分です。設問読みを通じ、しっかりとした仮説と目的を組んだ上で、与件の示唆を読み取るという姿勢を大事にしていただきたいと思います。
次回は、第3問です。

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