2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 組織人事

インテリジェンスとして理解するための読み方(6)

今回は、平成25年事例I第3問です。

第3問(配点 15 点) A社では、最近になって大学新卒の正規社員を採用し始めた。今後、中途採用しか行わなかった同社が新卒正規社員を採用するようになった理由として、どのようなことが 考えられるか。80 字以内で答えよ。

与件をまだ読んでいない前提です。まず、事例企業は「最近になって」大学新卒の正規社員を採用し始めたとあります。ということは、最近になるまで新卒の正規社員を採用してこなかった理由があるわけです。第1問設問2との関係で考えると、正規社員を大幅に増やさなくてもこれまでやってこれた事例企業が、ここに来て正規社員、しかも大学新卒の採用を始めたということです。
ここで考えるべきポイントは3点です。第1点は、新卒と中途採用の社員の違いです。企業はそれぞれに何を求めると考えるのが普通でしょうか。第2点は、大卒社員という制約条件です。大卒社員でないとできない何かがあるのかもしれません。そして、最も重要なのが第3点です。それは、事例企業が今後とるべき方向性から見た場合、大学新卒の正規社員に期待する役割です。
このような問題の場合、えてして一次知識の切り口をストレートに当てはめて解答しがちです。それでも解答になるかもしれませんが、事例に沿った解答が常に得られるとは限りません。例えば、一般的に新卒社員は企業の中核となる社員を長期的に養成するという目的があるとして、それが無条件に事例企業に当てはまるのでしょうか。大手の参入が続いている中で、骨・関節サプリの一本足に近い商売をしている事例企業は、次世代の新商品の開発が課題です。そのような会社が、長期的な中核人材育成のためだけに大学新卒社員を雇う余裕があるでしょうか。少なくとも、新製品の開発による社業の発展に寄与しそうな可能性を持つ新人を長期的な労働力として速やかに確保し、その中で次世代の経営を任せる人材を長期的に育成するという程度の具体性は必要でしょう。一次知識は事例企業の状況を理解するための道具ですが、必ずしも解決策そのものではありません。事例企業の経営課題自体に迫る分析をするように努力してください。そのためにも、設問を読みの質を上げるよう心がけてください。
なお、事例企業が新卒社員を雇えるようになるぐらい経営に余裕が出てきたからというのは、理由ではありません。それは内部環境の変化です。理由が聞かれているのですから、あるアクションを起こした目的や、アクションの主体の意図を書かなければ、理由を答えたことにはなりません。せめて、「経営に余裕が出てきたため、採用の最適時期だと判断したから」ぐらいは解答するようにしてください。

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