2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 組織人事

インテリジェンスとして理解するための読み方(7)

久々に、設問の読み方シリーズを復活します。待っていらっしゃった方にはお待たせしました。

第4問(配点 15 点)
A社では、ICTの専門業者に委託して構築した顧客データベースを活用している。しかし、そこで得られた情報は、必ずしも新商品開発に直接結びついていない。そうし た状況が生じる理由について、80 字以内で答えよ。

第4問を見て「あれっ」と思った方も多かったことでしょう。なぜ事例Ⅰで顧客データベースの情報について聞かれるのかという疑問が生まれるのもやむをえないと思います。しかし、この設問も、事例Ⅰの視点から分析すれば、様々なヒントが見えてきます。
まず、この設問の戦略的レイヤーはどれでしょうか?一見すると機能別戦略が問われているようですが、その背後には以下のような課題意識があると考えられます。まずはじめに、新製品開発につながっていないことが事例企業に問題点だということです。素直に捉えれば、それが問題だからこそ設問として問われている。言い換えれば、事例企業の社長は、経営戦略上新製品開発が必要と思っているが、それがうまくいっていない理由を知りたいという欲求があると考えられます。それを解決することが、事例企業の課題です。
次に、事例企業は顧客データベースの構築を外部のICT業者に委託しています。なぜ自社で構築しなかった、あるいは構築できなかったのでしょうか?構築できる人材がいなかったからでしょうか。そうだとすると、与件文からそのことが導き出せるでしょうか。
最後に、新製品開発につながっていないとはどのようなことを指すのでしょうか?これも言い換えると、顧客データベースの情報を活用して実現される新製品開発のイメージは、社長にとってどのようなものでしょうか。そのイメージが具現化されていないから、社長は顧客データベースを活用した新製品開発がうまくいっていないと感じ、その理由を問うているのでしょう。
以上の疑問に答えるために必要となる知識は、顧客データベースを構築することの意義です。マーケティング視点で言うと、過去の顧客の購買履歴から顧客の特性と購買行動との関連性を発見すること、顧客との長期的な関係性を維持することなどが意義でしょう。そうした視点から解答するやり方もあります。一方、事例Ⅰである組織・人事戦略の視点を重視すれば、別のアプローチも考えられます。例えば、外部のICT業者との間で、顧客データベースの細部仕様を検討できるような組織が未整備だったこと、オペレータが既存顧客から受け取った意見で、新製品開発につながるようなものが事例企業内で十分共有されなかったこと、などがあるでしょう。
当然これらは仮説ですから、与件文を読むことによって、最も蓋然性が高いものに絞り込んでいくことになります。したがって、この場では何が模範解答かは申し上げません。ご理解いただきたいのは、機能別戦略が問われる設問であっても、その背後にはこれまでの、あるいはこれからの全体戦略の視点を十分に踏まえる必要があるということです。新製品開発にICT活用がうまくできてなかったとという「ファクト」をインテリジェンスとして捉えるためには、事業環境と全体戦略の分析と、それが持つ文脈に関する考察が不可欠です。

それでは、次回からは与件文の分析に移りましょう。

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