2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 組織人事

インテリジェンスとして理解するための読み方(4)

今回は、平成25年度事例Ⅰ第2問です。

第2問(配点 35 点) A社の従業員の大半を占める非正規社員の管理について、以下の設問に答えよ。

(設問1) A社は、同業他社と比べて時給が多少高くても、勤務経験がある中高年層の主婦をオペレーターとして採用している。それには、どのような理由が考えられるか。 80 字以内で答えよ。

(設問2) A社のオペレーターの離職率は、同業他社と比べて低水準を保っている。今後、その水準を維持していくために、賃金制度以外に、どのような具体的施策を講じる べきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ。

第2問も、第1問と同様に、リード文から始まっています。リード文からは、非正規社員が事例企業の従業員の大半を占めることがわかります。与件文を読んでいない前提ですから、事例企業は、経営者を含む一部の正規社員と、その他多くの非正規社員で構成さているんだろうなあという推測ができます。逆に言えば、正規社員が少しでも十分に回っていく会社なのでしょう。そんな「あたり」を付けておきます。また、「非正規社員の管理について」とありますから、非正規社員の組織管理上または人事管理上の課題や問題があるのでしょう。勘が鋭い方なら、このあたりで企業経営理論の組織論に関する知識が思い浮かんでいるかもしれません。
ここでも、リード文の分析をもう一歩掘り下げてみましょう。なぜ本事例では非正規社員の管理が出題されているのでしょうか。端的に言えば、非正規社員の管理がこの事例企業の経営の方向性に影響を与えると社長が考えているからです。各自例の与件文と問題は、そのまま社長の言葉であり、そこには社長の思いや不安が現れていると考えましょう。
それでは設問1を見てみましょう。設問1から分かることは、事例企業は①勤務経験があり②中高年層に属し③主婦である非正規社員を、④「オペレータ」として、⑤「多少時給が高くても」雇用していることがわかります。そして、なぜ事例企業がそのようにしているのか、理由が問われています。その理由を一番よく知っているのは社長自身の「はず」なのに、なぜ問われているのでしょうか。出題の趣旨的には「何かを分析させる能力を問う」ためでしょう。しかし、現場の一診断士としてのスタンスは、①社長が感覚的に感じていることをしっかりと理解させる②事例企業の経営の方向性との整合やズレの度合いを明らかにする、です。
第1問では、事例企業が正規社員を大幅に増やさない、すなわち正規社員の雇用にお金をあまり使わずにやってきた理由が問われました。つまり、この会社は正規社員にあまりお金を使いたくないわけです。一方、オペレータは、多少時給が高くても、細かい条件に当てはまる人材を採用してきたわけです。この違いはどのような背景から生まれるのだろうかという点に思いを致さなくてはなりません。
つまり、この会社の競争力の源泉は、 正規社員というよりむしろオペレータたる非正規社員の存在であると、問題文は暗に示しています。そして、その競争力は勤務経験により発揮され、中高年層かつ主婦であるというオペレータの属性に依拠するものです。また、具体的な業務内容はまだ分からなくても、おおよそ顧客と接する業務を実施しているのだという推測ができ、その顧客との関係性が競争力につながっている。だから事例企業はこのような属性を持つ人材を雇っているわけです。
では、オペレータが非正規社員であることと、「多少時給が高くても」としている部分は、どのように解釈できるでしょうか。これは皆さんへのクイズにしたいと思います。
次回は、第2問設問2です。

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