2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験)

与件の箱庭

ねくすと勉強会に入会して真っ先に指導されたのは、「与件の箱庭で解答する」ということでした。最初のうちはその意味するところをよく理解できませんでしたが、今から振り返るととても深い意味のある指導だったと思います。

箱庭とは、箱の中に芝生やオーナメントなどを配置し、あたかも本物の庭のように作り上げた芸術作品です。以前も書きましたが、与件文とは診断先の社長へのインタビューや、診断先の企業から提出された経営資料をストーリーとして取りまとめたものです。実際の診断と二次試験の最大の違いは、診断では後から出てきた疑問や不明点を改めて診断先に確認できますが、二次試験では与件文と設問に書かれた以上の情報は提供されません。つまり、与件と設問で示された内容から言えることしか書けないのです。それはまさに、実際の企業ではなく、与件という「箱庭」で表現された(架空の)企業を診断するということです。

与件の箱庭で解答するための作法はいくつか存在します。まず、「こんな会社なんかありえない」という考えは禁物です。与件に書かれているのですから、少なくとも二次試験の時間中はその企業は存在しているのです。むしろ考察すべきは、なぜそのような企業が存続できているのかということでしょう。また、「これだけの情報では解答が導けない」という考えは、早めに修正しましょう。二次試験の事例は、もとより少ない情報「しか」示されないのです。とはいえ、実際にはちゃんと解答が書けるよう、必要十分な量と質の情報が含まれています。情報が少ないと感じてしまうのは、事例企業の環境や戦略、経営課題等の導出につながる「問い」を作れていないことと、与件に含まれる情報(インフォメーション)をインテリジェンスにできていないということです。「慢性的な赤字に苦しんでいる」という記述があれば、「なぜこの会社は慢性的な赤字に陥ったのか」「赤字が経営に及ぼす影響はどの程度か」といった問い立てる分析力、当期純利益の数字の頭に三角形が付いている損益計算書、頭を抱えている社長、沈滞している会社の空気といったものを思い浮かべられる想像力が不足している可能性があります。

これは、環境分析でも同じです。「他社の追随を許さない加工技術」を「強み(S)」と分類することは簡単ですが、そこからもう一歩踏み込んで、「与件から読める内容または一次知識から、なぜこの加工技術が強みといえるのか」や、「なぜこの会社の加工技術に他社は追随できないのか」を考えることが重要です。それらを意識するからこそ、競合の出現で事例企業が苦境に陥ったとき、なぜそのような環境変化が生まれたのかを理解することができます。それは単に強みが強みでなくなったからではなく、強みとして維持させてきた要素とそれを取り巻く環境に変化が生じた可能性があるからなのです。読みの質は、そのような細部で決定されます。そうやって、与件の箱庭で戦う「武器」を手に入れるのです。

これは、無意識に「なぜ」を繰り返しているだけでは不十分です。与件を構造的に捉えるからこそできることです。私は、ねくすと勉強会では、そのレベルに踏み込んで議論や指導をしています。ということで、今回はちょっとうるさ型の内容で失礼しました。ねくすと勉強会の内容ご関心をお持ちでありましたら、お気軽に当勉強会HPからお問い合わせください。

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