2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 組織人事

平成27年度診断士2次試験の振り返り 事例Ⅰ その3

事例I振り返りの3回目です。今回は第4問と第5問です。

第4問は、事例企業がなぜ成果主義に基づく賃金制度を取り入れていないかが問われています。これは、第3問の議論を踏まえ、安定的な業績を挙げている関連会社と、売り上げシェアが小さい健康ソリューション事業や自動車部品事業を抱えている本社を比べてみれば分かります。このような企業グループが単純に成果主義賃金制度を導入すれば、本社と関連会社の社員の処遇に格差がつき、ひいては社員間に不満がたまる恐れがあります。特に健康ソリューション事業はこれから成長が期待できる事業だけに、スタートアップ時の業績の低さを甘受しても、社員の配置や育成、評価を適切にし、社員が精一杯事業の拡大に専念できる環境を作る必要があります。第3問でも指摘しましたが、この事例企業に必要なのは、グループ全体の一体感です。それを維持するために、あえて成果主義的な賃金制度を導入してこなかったと言えると思います。

第5問は、健康ソリューション事業のようなサービス事業を拡大させるために、どのような点に留意して組織文化の変革や人材育成を進めていくべきか、中小企業診断士として解答するよう求められています。設問の制約条件から、組織文化の変革と、人材育成の2つの点について解答することが必須です。事例企業は、スポーツ用品の製造に始まり、ゲートボールやグラウンドゴルフといったシニアのスポーツ用品の製造、自治体や大学との連携による福祉事業の展開、そしてそれらの知識や経験、ネットワークを活用し、世代を超えたスポーツ事業全体を健康ソリューション事業と再定義して、サービス事業を開始しました。ここで言える事例企業のねらいは、世代を超えた長期的な顧客の囲い込みでしょう。そして、40名の従業員を健康ソリューション事業にアサインしていることからも、同事業を今後の成長の軸にしたいと考えていることが推測できます。

一方、事例企業は製造業ですから、最終的な利益は製品から獲得するのが最も効果的です。タニタの例を引くまでもなく、サービス事業は、最終的にはモノを買ってもらうための入り口でしょう。そのためには、健康ソリューション事業で獲得した顧客が顧客が長期的に事例企業の製品を買ってもらえるような体制作りを全社的に進めていくことが求められます。以上をまとめると、健康ソリューション事業を将来的な成長の軸とすることに留意し、健康ソリューション事業で得た顧客ニーズを製品化できるよう、社内コミュニケーションを促進する風通しのよい組織作り、長期的な顧客のロイヤリティを獲得できるような、顧客のライフステージに合わせた健康サービスを提供できる人材育成を実行するという解答が考えられます。

次回は、事例IIに移ります。

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