2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 組織人事

平成27年度診断士2次試験の振り返り 事例Ⅰ

平成28年のねくすと勉強会が本格始動しました。今年のメンバーは30名弱と、例年と比べて若干少ないですが、実力者と新入会員が共に勉強に頑張っています。

さて、今回から、平成27年度の診断士2次試験の振り返りを始めていきたいと思います。とはいえ、模範解答につながるような網羅的な内容というよりは、各事例のポイントとなる視点を紹介してゆくようなものにしたいと思います。まずは事例Ⅰ、人事・組織戦略事例です。

私は個人的に、平成27年度の事例Ⅰは、まずまずの良問だと思います。環境分析、全体戦略、戦略上の課題、人事・組織戦略がバランスよく問われています。また、与件文も示唆に富んだ内容になっています。ここ数年、与件文からの抜き書きでは対応できないような出題傾向が見られますが、本事例もそのような内容でした。

本事例の最大のポイントは第2問で、苦境に陥った事例企業が、ブロー成形の事業を関連会社として独立させた理由について問われています。簡単に振り返ると、事例企業は、終戦後の経済発展に伴い、消費者のスポーツ需要をうまく捕まえて、バドミントン用品の製造で成長してきました。台湾にラケットの専用工場を建設するなど、業容を拡大してきましたが、海外からの安価な製品の流入などの環境変化により、業績は急速に悪化しました。そのような中、創業社長から請われて、息子である現社長が経営を引き継ぎ、ブロー成形の技術向上や顧客探しの全国行脚により、プラスチック容器製造事業の基礎を作りました。現社長は、「再起をかけて」このビジネスをスタートし、「社内の新規事業」としてスタートした同事業を関連会社として独立させました。

ブロー成形事業については、与件文の中に様々なヒントがあります。まず、①スポーツ用品製造が主力のときに、ブロー成形は「細々と」続けられていました。環境変化でスポーツ事業が苦境に陥ったとき、②ブロー成形事業により事例企業は従業員を「路頭に迷わせる」ことをせずにすみました。③ブロー成形技術は、事例企業の特許技術を活用できるものでしたが、④新規事業は技術難度とビジネスそのものに対する考え方がスポーツ用品とは異なるものでした。これら①から④のそれぞれのヒントが意味することと、そこから得られる関連会社化の理由について考えてみたいと思います。

①については、時代の波をつかんで成長したスポーツ用品製造事業と異なり、ブロー成形事業の事業シェアは小さかったことを示します。それでも前社長は同事業を細々ながら継続してきました。②については、ブロー成形事業により、事例企業は経営を継続することができ、従業員の首を切ることはありませんでした。前社長はブロー成形事業継続から何かを学んだはずです。③ブロー成形事業は、事例企業の強みを活用できる事業分野ですが、④スポーツ用品製造事業とは異なるビジネス環境から、何か異なるコンセプトで事業をしてゆく必要があることを現社長は気付いています。以上をまとめると、ブロー成形事業は事例企業にとって、景気や競争激化で環境が不安定なスポーツ用品事業とは異なり、安定的な経営を可能にする重要な事業分野であり、今後も大事に育てていく必要がある事業です。しかし、スポーツ用品製造を主業としてきた本社とは、事業の特質的に相容れず、ことによっては事業間のコンフリクトが発生する懸念があったから、関連会社として独立させ、自律的に成長していけるようにしたという仮説が考えられます。また、独立事業にすることで、そこで働いてきた従業員のモラールを向上させるという狙いも考えられます。いかがでしょうか。

次回は、第3問について考えてみたいと思います。

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