2015年

平成27年度診断士2次試験の振り返り 事例Ⅲ その5

事例Ⅲの振り返り第5回は、第4問です。
第4問では、国内生産を維持する考えである事例企業が強化すべき点について問われています 。ここで注目すべきは、問題文の書き出しである「海外製品との競争が激しい中で」という部分です。ここをさらっと読み飛ばすと、書くべきポイントをみのがしてしましますので注意してください。つまり、この問題では、海外製品との競争を勝ち抜くために、国内生産を維持していく上で何を強化すべきか、もしくは国内生産の維持を決意した事例企業が強化すべき点は何かということが問われていると解釈します。

事例企業はなぜ海外製品との競争に苦しんでいるのでしょうか。与件文の前半で、事例企業は海外製品との競争で、売上の低下が起こった、つまり海外製品は事例企業のマンホール蓋よりも価格競争力があることがわかります。SWOTで言うと紛れもなく脅威です。それでは、その脅威に対する強みと弱みは何でしょうか。強みは①鋳造から機械加工、塗装までできる一貫生産体制②鋳造技術に精通した営業要員③強化された鋳造技術です。一方の弱みは①人材確保が難しく、社員が高齢化していること②生産リードタイムの長期化が発生していることです。

ここで鍵になるのは、これらの強みと弱みは、主力製品のマンホール蓋の分野で事態改善に寄与できるかという視点です。マンホール蓋は、言ってしまえばコモディティであり、だからこそ海外製品との競争に巻き込まれてしまったのです。むしろ事例企業は、せっかく手に入れた強みを生かして、企業ドメインを再定義し、そちらに注力すべきです。つまり、マンホール蓋の競争力を高めるのではなく、産業機械部品や自動車部品の生産の競争力強化のために、これらの強みを強化し、弱みを克服すべきということです。

主力製品のマンホール蓋の分野で競争力を強化するという立場では、なかなか良い提言は見つかりにくいと思います。主力製品をシフトし、機械部品製造を今後の主要製品にするという積極的な姿勢を取れば、例えば機械加工に長けた若い社員を採用し、高齢化している社員との間で製品ごとに役割分担させるとか、高齢社員の技能を伝承させるとか、機械加工工程の生産性強化によって部品の複雑成形要求に対応するといった策が生まれます。このとき、単に施策を羅列するだけでは不十分です。「主力製品を価格競争が激しい建設資材から機械部品製造に移行し収益性を向上させる」と、きちんと目的を述べた上で、施策を記述してください。

この問題のポイントは、マクロの競争環境変化への対応策として、戦う土俵を変えることです。勇気がいる提言かもしれませんが、与件をよく読めば、決して実行困難な提言ではありません。広い視野で課題を観察する能力を評価する問題だったと言えるでしょう。

次回から、事例4に入ります。

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