2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験) 受験生活 組織人事

設問は事例企業の「問診票」

ねくすと勉強会では、事例の解答にあたり、設問から読むようにしています。同じようなことは他の予備校や参考書などでも言われていることと思います。

与件から読む目的は、事例の概要を把握して、限られた時間で与件情報を効率的に把握するというものです。その考え方は基本的に正しいですが、ここではもう一歩踏み込んだ与件から読み方をしてみましょう。つまり、設問をあたかも「与件企業の問診」と捉えて読むのです。

皆さんも、体調がすぐれず病院に行くと、まずはじめに問診票が渡されて記入が求められます。何分かすると看護師さんがそれを受け取り、担当の医師に渡します。診察室に呼ばれたら、問診票をもとに内診や検査を行い、病名を確定します。事例をそのようなイメージで読んでみるとどうなるでしょうか。

ここでは、平成27年度事例1を例にしてみましょう。大前提として、事例1ですから、人や組織で何か問題や課題を抱えている会社なのでしょう。
第1問で、スポーツ用品市場の特性が問われています。ここから、事例企業はスポーツ用品を主力製品としていることが推測できます。
第2問ではプラスチック成型事業新しい分野で行っていたが、それを関連会社に移管しています。スポーツ用品製造会社なのに、プラスチック成型までしているのですね。スポーツ用品だけでは不十分な何かがあるのでしょう。そして、その事業を関連会社に移管しているということは、同一会社で二つの事業を進めることに何らかの問題があるか、あるいは関連会社に移管することで、何らかの経営上の効果を狙ったかもしれません。
第3問では、関連会社を含めたプラスチック容器製造の売上が60%を占めるようになった会社が、将来抱えるかもしれない経営課題が質問ですね。一つの事業ドメインの売上がここまで大きくなると、発言力や経営資源の配分などについて、社内でいろいろコンフリクトを抱えることでしょう。それをどうにかしないと、将来の経営に不安を抱えるかもしれないと社長は思っていらっしゃるのでしょう。
第4問の質問は、事例企業グループ内で、成果主義に基づく賃金制度を採用していない理由が問われています。この社長は何か理由があり、「あえて」成果主義の賃金制度を採用していないのでしょうか。診断する先生の腕前拝見という問題ですね。
最終の第5問は、体力測定や認知症予防ツールなどのサービス事業を進めるにあたり、組織文化の改革や人材育成で留意すべき点が問われています。もしかすると今の組織文化や人材育成が、サービス事業の推進にあたり適切ではないのでしょう。製造業である事例企業がサービズ業にも業態を拡大する上で、2つの業態で求められる組織や人材の違いを明確にし、全社的に両事業を成功させるための留意点を、社長は求めていらっしゃるのですね。

と、ここまで見てくると何か見えてくるものがありませんか?そうです。与件を問診としてみることによって、この事例企業はスポーツ用品とプラスチック成型事業の二本柱に加え、健康サービス業へ進出することで、将来の企業の成長や経営の安定化を目指しているという「方向性」です。病気の治療で言えば、治療方針です。あとは与件を読み、これまで申し上げてきた問いを立てながら、問いの解が上記の方向性に沿ったものか確認し、字数に合わせて優先順位をつけて書けば答案の出来上がりです。実際の解答はこんなに簡単ではありませんが、まだ解答のイメージが湧かない方は、一度この方法をお試しになってはいかがでしょうか。

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