2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験)

キーワードの甘い誘惑

早い時間からお酒を飲む機会があり、そのまま寝込んだら中途半端な時間に目が覚めてどうしようかと思っているところです。

さて、今回は、キーワードについて考えてみたいと思います。勉強会の指導でも、合格者やA答案とそれ以外の答案を比較し、前者には含まれていて、後者には含まれていないことが多いキーワードを抽出するという作業を行います。結論から言うと、合格答案やA答案には、誰が見ても「そうだよな」とうなずくキーワードが含まれています。キーワード確認は、二次試験初学者にとっては大きな発見ですし、複数回受験しているメンバーにとっては、事例を振り返るきっかけになります。

採点側の立場から見ても、キーワードは「点を与える」理由になりますから、部分点的な加点要素として、事例ごとキーワードがリストアップされていると推測されます。しかし、ここでよく考えなければいけないのは、キーワードが含まれていると合格答案になるのかという問題です。

陥ってはならないのは、キーワード探しの旅です。事例の分析でよく使われるSWOT分析で、それぞれの要素を抽出したとしましょう。やりがちなのは(私もそうでしたが)、SWOTの各要素を原因として、直接的に結論を書いてしまうことです。このやり方に慣れてしまうと、与件文読みでついつい「SWOT」探しの旅をしてしまうのです。しかし、これまで何度も申し上げてきたとおり、SWOTの各要素は、それらがなぜそうなるのかという「理由」があるはずです。

平成25年の事例2第1問で、事例企業は副社長の就任前も、小規模ではあるが事業を継続できた理由が問われました。多くの方は、食感の柔らかいさつま揚げや、機械化後もその風味が変わらなかったこと(だったかな)を「理由」に挙げています。確かにそれらは事例企業の「強み」ですし、多くの合格答案にはそれらの要素が含まれていたことでしょう。しかし、本当に書かれなければならなかったのは、そうした強みを支持して事例企業の商品を買ってくれる「地元顧客の存在」であるはずです。彼らがお金を出して商品を買ってくれたからこそ、事例企業は生き延びてこれたのです。この問題で合格答案かどうかの分かれ目となるのは、「柔らかい食感のさつま揚げ」しか指摘しなかったかどうかです。

この問題でもわかることですが、きちんと事例企業を分析できていれば、自ずと必要十分なキーワードが含まれてくるはずです。この順番を逆にすると、見つけたキーワードから「無理やり」答案を作り出すことになる恐れがあります。答練を続けていると、自然とキーワードの「甘い誘惑」を察知する力が付いてきます。そんな時こそ注意して、なぜそれが解答のキーワードになるのかを考察する習慣をつけてください。

2 Replies to “キーワードの甘い誘惑

  1. 通りすがりの者です。
    井澤さまの鋭い指摘に目が留まり、コメントさせていただきたいと存じます。
    (井澤さま宛てではなく、受験生向けのコメントです)

    「柔らかい食感のさつま揚げ」は製造業のマーケティングミックス(いわるゆ4P)のうちの商品を表してます。
    これは製造業側が常に変えるべきものです。
    そのマーケティングミックスの上位概念に市場細分化(人口動態、地理、心理、行動)があります。
    更にその上位概念に戦略ドメイン(顧客:だれに、機能:なにを、技術:どのように)があります。
    井澤さまは、マーケティングミックス層ではなく、その上位層を解答することが求められていることをご指摘されていると思慮いたします。

    さて、私見ですが、せっかく一次試験を突破したのに、二次試験になると一次知識を使わず、「キーワード探しの旅」に出る人が絶えないのは、受験生解答を集めて出版している某書籍の影響と考えます。

    二次試験合格後行われる中小企業診断協会が主催する実務従事に参加されたことのある人はわかっていますが、企業診断のイロハが書かれたテキストには、戦略ドメイン→標的市場→マーケティングミックスのことが書かれていたかと思います。

    「キーワード探しの旅」に出るのか、出題者の意図に沿った解答作成の技を磨くのか。
    私は後者で合格したと確信しております。

    1. H23年度合格者様

      コメントありがとうございます。
      私も、キーワードを全否定するつもりではありません。申し上げたかったのは、与件の戦略的構造をストーリーとして理解できるようになれば、自ずと必要なキーワードが含まれる解答が導かれるということです。それゆえ、当勉強会では、どのようなロジックでそのキーワードが含まれるようになったのかを考えるよう、メンバーに伝えるようにしています。

      実務補習については、たった5日間とはいえ、二次試験を通じて学んだことがトータルに求められますので、個人的には「試験合格後も通用する課題解決力」で二次試験を突破していただきたいと思っています。

      これからもどうぞよろしくお願いします。

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