M.S

1. 中小企業診断士を目指した理由

私は財務会計系のコンサルタント会社に勤めており、その中で事業再生チームに所属しています。特に中小企業のお客様に対するコンサルタント案件が多く、入社当時より中小企業診断士は業務に直結した良い資格だな、とぼんやり憧れておりました。実際チームには診断士が数名おり、その誰もが「取っておいて無駄にはならない資格」と声を揃えて教えてもくれました。しばらくは業務に慣れることに精一杯でしたが、数年を経てとうとう本腰を入れて診断士を目指すことにしました。(少し汚い言い方ですが、「名刺に箔をつけたい」という思いがあったことも事実です。笑)

2. 一次試験

一次試験は参考書と過去問を片手に独学で行いました。今振り返ると、一次試験はこれまでの人生で多かれ少なかれ触れたことのある科目が多く、懐かしさも覚えつつ楽しんで学習できたと思います。(財務・会計⇒一応本職。運営管理⇒前々職がメーカーで生産現場の体験や工場との業務の繋がりもあり。企業経営理論⇒一時期経営企画部門にいたこともあり当時齧った知識が頻出。経営情報システム⇒前職がIT系だったため多少耳慣れた言葉が多数。)そんな中、逆に全くの初学であった経済学、経営法務、中小企業政策は明確に苦手意識があり、恥ずかしながら一年目は法務で足切りを食らい合格できず、二年目の2019年に何とか突破しました。

月並みですが、一次試験は例年1-2科目難易度が高い科目が散りばめられるため、得意科目でカバーする!という意気込みも大事ですが、余裕をもって7科目全て自信が持てるレベルまで詰め込むと安心できると思います。

3. 二次試験(ねくすとに入会)

二次試験は独学では無理だと感じていたところ、ご縁ありねくすとのOBの方とお知り合いになり、ねくすとをご紹介頂きました。そして一次試験合格後参加させて頂くことになりました。

4. ねくすと一年目

二次の右も左も分からないまま取り敢えず答案を作成し臨んだ初回勉強会でしたが、そのレベルの高さや皆様の熱意に衝撃を受けました。同時に、残り2か月半という期間の無さに危機感を覚えました。

当時の私は「レイヤーって何?」「〇×で判断できない筆記なのだから、感性が大事だろう」ぐらいの感覚でいたド素人でしたが、早々に文章の読みづらさ、因果関係の不明瞭さ、問われたことに答えていない、等基本的な事柄から叩きのめされ、若干の自信喪失状態にも陥りました。まさか日本語でここまで駄目出しをされるとは…。

ですが、時間もない中しょげてても仕方ないと自分を奮い立たせ、毎日必ず1-2事例解き、頂いたコメントは全て整理しチェックリストを作成し、何とか食らいついていった(つもり)でした。

そして二次試験本番-残念ながら結果は不合格でした。

事例ⅠD34点、事例ⅡA68点、事例ⅢA70点、事例ⅣA60点⇒合計B:232点

当日一番手ごたえがあった事例ⅠがDであったことに驚きは隠せませんでしたが、その理由は、二次試験において最も基本であり最も大切である「答案はお客様(多くは社長)に向けた報告書」と言う鉄則がきちんと自分のものになっていなかったことと自己分析しています。

必要以上に難しい用語/知識や、突飛で斬新なアイディアは不要。理屈に基づく首尾一貫した明瞭な提案を、正しい日本語で、社長が腹落ちしやすい形で伝えられるか。

極論を言えば、二次試験はこれが全てなのだと考えます。

5. ねくすと二年目

二年目は二次受験組のリーダーを担当させて頂きました。リーダーと言っても特に大それたものではなく、受験生への声掛けや勉強会の設定が主な仕事です。ですが、自分の中でリーダーを務めさせて頂く上で心に決めたことは「サボらないこと」。リーダーの勉強に対する熱意が少なくては全体の士気が下がります(と勝手に思っていました)。

2020年はコロナ影響もあり、それまでの対面型勉強会から、Zoomを活用したオンライン型の勉強会に移行し、またサイボウズを中心としたウェブ上でのやり取りも従来以上に活発化しました。その中で、極力勉強会に参加することは勿論のこと、答案の事前アップや、勉強会やウェブでの受験生/OBの方のご指摘を受けた後の練り直し答案のアップ等を欠かさないことを心に決めて取り組みました。

この自分へのルールは良い意味でプレッシャーとなり、長距離マラソンのような受験生活を乗り切る一因になったと考えています。

同時に、毎週増えて行く答案シート(Excelで一元管理していました)を眺めることや、次はどんな事例が来るだろうと想像することが段々楽しくなってきました。何であれ楽しみながら勉強するのが長続きの秘訣です。

とは言え、勉強を続けられた最大の要因はやはり、OBの皆様の手厚いご指導や、毎週一緒に(OBの方々にボコボコにされながらも)頑張ってきた受験生の皆様がいたことです。改めて、ありがとうございました。この経験は独学ではきっと味わえなかったでしょう。

そんなこんなで二次試験本番-リベンジ成功しました!

6. 二次勉強法

あくまで私見ですが、私が心掛けたこと並びに出来なかったことを一部簡単に紹介させて頂きます。

答案は最初必ず80分で手書きで書く:本番は手書き一発。私は妻が買ってきてくれたノートを使っていましたが、実はこれ子供用のマス目が相当大きいものだったようで、本番当日答案用紙のマス目が小さく書き辛い!と焦りました。笑 小さい文字を綺麗に書く訓練もしておいた方が良いですね。

他の受験生の回答を分析する:人それぞれ強み/弱みがあり、答案には必ずそれが表れます。各人の強みは何か、それと自分との距離はどれぐらいか、どうすれば埋められるか、その人の答案に対し感じたツッコミどころは自分の答案でも起きていないか。ヒントは無数に転がっています。与えられたフィードバックを活かすのは当然のこと、自ら能動的に分析することも実力をつけるための良い訓練だと思います。

タイムマネジメントにコンティンジェンシープランを用意する:これは私が本番出来なかったことですが、是非皆様に意識頂ければと思い記述します。40分で骨子を作成⇒40分で答案、等人にはそれぞれのタイムマネジメントがあると思いますが、この中に「〇〇分までに骨子がまとまらなかった場合の対処法」パターンを用意すると良いと考えています。設問対応も良し、絶対に×とは言えない答えで答案を埋めるも良し、いずれにせよ緊急事態を想定した対応プランをきちんと作っておくことで、少ない残り時間に冷静に対処出来ると思います。

文章の型を身に付ける:これも本番対応です。時間がなくきちんと練り上げて答案を書く余裕がない場合に向けて、自然と手が動くレベルで文章の型を身に付けておくことをお勧めします。「〇〇は〇〇である。理由は~」「〇〇を助言する。具体的には~」等です。私の場合、より細かい例で言うと、複数のことを併記したいが文章が長くなりそうな際は「・」や「/」(スラッシュは本番は使いませんでしたが)で並列表記することにしておりました。時間短縮になると同時に、下手に日本語でまとめるよりも読みやすく、かつ助詞や文章構成における間違いが起きにくい文章になります。

7. 最後に

診断士試験の難しさは「総合力が問われる」点にあると考えます。

診断に最低限必要な知識を持ち合わせた上で、短い時間で初見の会社の概要を読み内部環境/外部環境を分析し、課題と会社の採るべき方向性を整理し、更に短い時間でそれを正しい日本語でまとめ上げる。

記憶力、分析力、論理的思考力、日本語力、そして瞬発力。

一つ一つにそこまで人間離れした能力は問われていないものの、それらを掛け算のように組み合わせて当日発揮する、これが一気に難易度を高めていると感じます。

ねくすとの勉強会は双方向型です。上記に挙げた5つの能力は、ねくすとの対面型ディスカッションに臨む際おのずと求められてきます。勉強会では無言は許されません。自分がどのような思考プロセスで答案を書いたかを説明し、参加者はそれに対して指摘や見解をその場で論理的にコメントする必要があります。

このプロセスは本番当日求められる上記の能力を間違いなく高めてくれる筈です。

今ホームページをご覧になっている将来の診断士の皆様、是非ねくすとで一緒に合格に必要な総合力を培いませんか。私も微力ながら応援させて頂きます。

最後に、飲み込みの悪い私に一年半根気強くご指導・ご鞭撻頂きましたOBの皆様、一緒に切磋琢磨させた頂いた受験生の皆様に改めて心からの感謝を申し上げ、本稿を終えさせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

M.S