2021年 勉強法(二次試験)

事例企業のミッションは何ですか?

前回から、少し時間が経ってしまいました。もう少しで一次試験ということもあり、受験生に中には最後の追い込みの最中の方も多くいらっしゃるのではないかと思います。新型コロナウイルスの感染がおさまらない状況ではありますが、どうぞ体調にお気をつけになり、当日は最高のコンディションで受験されることを期待しております。

さて、今回の内容はやや挑戦的です。二次試験で皆さんが向き合う事例企業のミッションについて考えてみましょう。すべての組織や個人には、存続して活動を続けていく理由である「ミッション」があります。忘れられがちな視点ですが、例えば学校やそこの先生のミッションは、すべての生徒が成長していく上で必要な知識や技能、社会生活を身に付けさせることでしょう。そのミッションを完遂するために、学校や先生はカリキュラムを定め、教材や教育計画を作り、毎日生徒を指導しています。学校や先生の「仕事」は、そうした目に見える部分だけでなく、その背後にある「ミッション」も含まれるのです。

これを診断士試験に置き換えてみましょう。与件文と設問を読んで、「この企業は何のために存在するのか、存在しなくてはならないのか」が見えてくると、事例企業と、企業が置かれている環境やステークホルダーとの関係がよりわかりやすくなります。その結果、「与件文の誰々が企業に求める(期待する)もの」がニーズであったり、出現した競合が、事例企業のビジネスドメインで本当の「脅威」なのかがわかるようになってきます。逆に、ミッションが見つからない企業は、存続意義がなくなってきており、早晩市場からの退場が求められることになるでしょう。

平成30年の事例Ⅱでは、老舗旅館が事例企業となっていますが、商業と観光の街とはいえ、都心から2時間程度で往復できる街の、築45年になる旅館のミッションは何でしょうか?旅館の基本的な機能である「客を宿泊させること」であれば、駅近くにもチェーン店のホテルがありますし、なんなら観光客は都心に戻って夜を過ごせばいいわけです。執筆者の仕事の場として、単に他から邪魔されず時間を過ごせる場を提供することが、これまでの同社のミッションであり、そこには一定のニーズがありました。しかし、なじみが高齢化し、もはやそのようなニーズを満たすことが事例企業のミッションではなくなってきています。ミッションを失った組織は、新たなミッションを生み出さなければ衰退します。8代目の社長が気づいた自社のミッションは何なのか。そこから事例を見渡すと、いろんなものが見えてくるはずです。ミッションを意識すると、単に「こんなことをするといい」ではなく、「自社だからこそこれをするとこんな価値を提供できる」という解決策が導かれます。

事例Ⅱは、他の事例と比較して、与件の要素を取り込んで成長の方向性を作っていく点では、合格答案には概ね共通した要素が含まれるはずです。ただし、どのようなコンセプトで要素をどのように組み合わせて展開するかは、受験生によって異なってくるでしょう。説得力のある答案とするためには、事例企業の課題解決の方向性に合致したストーリーが必要です。そしてその基本となるのが、事例企業に課されたミッションです。

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