北の松っちゃん

2次合格発表で自分の受験番号を見つけた時の感動は、忘れられない。某受験校の講師が、「合格したら万歳三唱したくなる程です」と言っていたが、本当に辺りかまわず万歳したい気持であった。

「合格まで本当に長かった」というのが本音であるが、何回負けても(落ちても)、1回勝てば(受かれば)合格は合格である。多年度受験になった方もあきらめず頑張ってほしいと思う。

私は、非常に長い時間をかけて合格したため、それを一から書いていると膨大な量になってしまう。この合格体験記では、自分の多年度に至った失敗経験とたった1回の合格経験を基に、思う所を記したいと思う。
多少なりとも参考になれば幸いである。

【1次試験について】

1次試験は、「やる気」と「根性」があれば合格できる試験であると思っている。
私は、独学で学習を開始した。というか、学習開始当初は静岡県に居たので、診断士の授業を実施する受験校はなかったし、当時はWEB講義等の洒落たシステムはなかった。独学で学習せざるを得なかったのである。

やったのは市販のテキストと診断士学習の問題集、過去問だけである。そのテキストや問題を理解するために、WEBで調べたり、関連の書籍を読んだりはしたが…。その代わり、問題集と過去問はしつこく繰り返した。試験の前に、7回は繰り返した(7回以上は数えなかったし、3回以上連続で○のものはやらずに、×の問題のみを繰り返したりしたので正確に何回転と分からない)。
これで十分合格できると思うし、私も1次試験はほとんど合格してきた。

ただし、注意すべき点はある。
① 確実に理解できている事。言い換えると、他人に解答に至るプロセスをきっちり説明でき、正答に至る…このレベルに達していること。
② 過去問が難しくて解けないレベルの場合は、テキストの読み込みや市販の問題集で地力を養ってから、過去問に取りかかること。
ねくすと勉強会では、7・5・3と言う。いわゆるスピ問を7回、過去問を5回、模試を3回やるのが目安、という事である。
ただ、タイミング的には、5月のGW終了後からは過去問と模試に集中できるレベルでないと間に合わないと思う。
③ あるOBが、「1次試験の前には過去問5年分は全部正解できるようになっておく事」と言っていた。その通りだと思う。
過去問等で「これは解ける人は少ない。捨て問だね」と学習の段階で言う人がいる。それは現場対応としては正しい事かもしれないが、学習段階で理解しようともしないのは間違っている。少なくとも過去問の論点は繰り返し問われる事が多いし、診断士試験の出題範囲の中から出ているのであるから、多少苦労してもモノにしておいた方が良いと思う。
④ 2次試験を意識して、「1次試験のこの知識は、2次でどのように使えるか?」を常に考えておくこと。これは、ある多年度受験生OBに伺った話である。「2次試験に落ちて1次の振り出しに戻った時に、2次学習をあまりせずにいたが、1次試験で学習した知識を2次にどのように活用できるか?を考えていた。それが1次試験終了後の学習に役に立った」との事。

1次知識の学習は2次事例を解くためにあると考えた方が効率的であるし、事例で「何を聞いているか分からない」時にも、助けになる。

【2次試験について】

私は、1次試験はあまり苦労はしなかったが、2次試験で何度も苦杯をなめている。
その原因が何であったか?一言では言いきれない。大きな原因から小さな原因まで色々あると思うが、それらのいくつか(失敗原因)を紹介したいと思う。反面教師にして頂きたいのである。

Ⅰ)独学の弊害

先に述べたように、独学で学習を始めたために、どう事例を解いて良いか分からなかった。
事例を解くための書籍(受験校の市販テキスト等)を読んで、自分なりに解釈して事例を解いていた。
その後、東京に転勤になり、受験校の授業を聞いたり、ねくすと勉強会に入会し議論した際は衝撃であった。全く自分の考えていた事と違う。「えー、そうだったの?本当に?」という事のオンパレードである。
結局、独学で自分なりの解答プロセスを作り出すのに時間が掛ったし、その解答プロセス(悪癖)を修正するのに多大な時間がかかった。これが合格に時間を要した第一の要因である。

Ⅱ)計画性のなさ

何度か2次試験に失敗したが、その度に、「なぜ落ちたか?」を検証せずに(検証できずに)、学習を再開していたように思う。それなりの計画(年間や短期)は作成していたが、2次試験失敗の反省を漠然と考えながら作成していたと思う。
07年の2次試験終了後に、受験仲間に誘われて、「2次合格者の再現解答」と自分の解答(この年は2次を自己都合で受験できなかったので、改めて自分で作った解答)を比較して自分の欠点を洗い出し、年間計画に反映させた。徹底的にやったのは初めてだった。これをもっと早い段階でやれれば良かったと思う。
当時は、「2次試験の合格基準が曖昧で、どんな答案を書ければが合格なのかが分からないために、分析もできない」等と思っていたが、大きな間違いであった。
自分なりの敗因分析を踏まえて、ねくすとの議論に参加していればもっと早い段階で合格できたと思う。

ちなみに、08年も、受験仲間とお互いの不合格要因を分析した。結論は、「書くべき要素が入っていない解答が多い」「解答が一面的(多面的でない)」「財務の計算力が弱い」「事例Ⅱで意識すべき事が意識できていない」等であった。これらを、09年の計画に反映させて受験対策を立てることができた。これは、非常に良かったと思う。
楽天の元監督・野村氏が「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」と書いていた。その通りだと思った。敗因(不合格要因)分析は非常に大事である。敗因を的確に把握し、克服すれば合格の可能性は一気に高まる。

Ⅲ)難しく考える癖を持っていた

09年春に、OBから聞いた言葉である。「多年度受験生の方は、難しく考えすぎて、大きく解答を踏み外すことが多い。」このOBはストレート合格生であっただけに、私には衝撃であった。「やっぱり?そう思う?そうだよね」というのが、その時の感想である。

今から思えば、1次知識は大事だという事を本気で考えていなかったのかもしれない。与件情報と自分なりの考えを加えて、尤もらしい解答を書いていた。これで合格答案になるなら、そもそも事例問題は試験にならない、と思う。

これは、その後の事例を解く時の基本になった(元々、基本であったのだが、より一層基本を重視した)。SWOTちゃんとできている?方向性あっている?等もそうである。また、2次では「何を聞いているか分からない」問題が出る。この時の対応でも、1次基本知識を使う事を意識した。

私は、この「何を聞いているか分からない」問題を解くのに時間をかけて、点の取れる問題に十分な時間を割けていなかったが、これで大分改善されたように思う。また、そんな問題でも高得点は貰えないまでも部分点は取れるようになった。

Ⅳ)財務計算力の弱さ

「財務の計算力が弱い」と一言で言っても、様々な弱さがあると思う。財務の基礎力がない(基本的に分かっていない)。計算方法が分からない問題がいくつかある。計算方法は分かるが、答えが合わない。…等、様々である。

09年では、私は自分の財務計算力をこう分析した。基礎力はある(1次財務の過去問レベルの問題で8割程度は解答できる自信はあった)。しかし、①事例Ⅳの問題文を正確に把握しきれない(問題分に惑わされて、計算する上での条件を見落とす)事が多い、②事例Ⅳの段階でバテてしまって、とんでもないミスをやらかしてしまう、等の欠点がある。
対策を練った。

・①に対して…計算に必要な所を色分けした。例えば、計算に必要な数値=オレンジで囲む、計算に必要な条件=オレンジで波線を引く、単位=水色で囲む等。直接原価計算では、固定費=緑色、変動費=赤等である。そして、計算終了後は、シャーペンで、計算に使った数値、条件に斜線を入れて消しこんでいく。もし、斜線を引いていない物が残れば、計算に使っていないという事である。
この方法は、割合効果があって、少なくとも、計算に必要な条件、数値の使い漏れは防げたし、単位間違い等もなくなった。

・②に対して…とにかく、体力を付けようと思った。毎週土・日曜日は自転車に乗った。1回30分程度であったが、運動になったし、受験生活で沈みがちな気持ちもリフレッシュできた。
また、受験当日は、愛読マンガ「ドラゴン桜」のコピーを持って行き、事例Ⅲ終了後に見た。それは、教師が受験生に、東大最後の科目「英語」の心構えを説いているシーンである。
引用すると、「いいえ…最後は根性です!“絶対に取る”この気合いでなくては勝てません」「英語だけは負けない!勝つ!そう信じて120分間全力で突っ走ろう!」

08年はバテてしまって、最後は気持も負けてしまった。しかし、09年、やはりバテた。試験途中で頭が回転しなくなったのだ。おまけに、第2問、第3問の途中で何度か、「こんな難問、誰も解けないって。そんなにムキにならずに他の問題の見直しをした方が良いんじゃないの?」という囁きが聞こえたが、「こんちくしょうめ!」と自分を鼓舞しながら、事例Ⅳを戦い終えることができた。事例Ⅳ終了後は疲れきって立ち上げれなかったが、08年より粘れたと思った。結果的に、計算の正答は少なかったが、記述等で部分点を貰えたと思う。
馬鹿みたいに思われるも方もいるかもしれないが、2次試験の緊張状態で3事例を解いて、4事例目で財務を解く(特に、近年は難化しているので尚更)のには、実力だけでなく、理屈抜きで根性が物を言うと思う。

もちろん、財務の計算は量をこなし準備しておく必要がある。ちなみに、私は、09年は下記の物をやった。

ロジックで解く財務計算問題集(2回転)
スピード問題集財務会計(1回転)
財務の完全攻略(必要個所のみを4回転)
1次財務会計の過去問(5年分を6回転)
意思決定会計講義ノート(L1~3のみ4回転)
財務のカケラ(事例Ⅳの計算問題から抜粋した65問を6回転)

この際に、①の計算に必要な所を色分けする方法をトレーニングした。やる内にスピード感も養われていった。
また、「これ以上は無理!」と思えるまでやったので、試験当日も妙な納得感の中で、問題文(当日は、難問・奇問に思えたが…)に向き合えたと思う。

他にもミスを減らす工夫をした。
・できるだけ図を用いて、計算式で計算する事を避けた。この方がミスは減った。
・ミスした箇所、原因をノートに書いて、事あるごとに読んだ。そして、自分の計算ミスのパターンを把握し、それを防ぐ方法を考えた。

Ⅴ)できていると思っていたが、できていなかった事

09年の1次試験終了後に、受験校の模試をやりながら、「経営分析に時間をかけすぎている」事に気付いた
08年の財務失敗は、計算力不足と体力不足であると思っていたが、実は経営分析に時間をかけ過ぎて計算時間が短くなり、焦ったのも一因であると気付いたのだ。私は、経営分析にそこそこ自信があったので、盲点になっていた。
早速、あるOBからスピードアップ法を教えてもらい、私なりにアレンジしてやってみた。

・事例Ⅳ(過去問)と各受験校の模範解答を準備する。
※受験校の模試もやろうと思ったが、時間もなかったので完成度の高い過去問に絞った。
・事例を読んで、解答の方向性、設問構造を整理する。その上で、第1問(経営分析)の問題と事例文を読んで解答する。
特に、「設問文」「候補とした経営指標の分子、分母」「それに該当する与件」の3点を見ながら解答した。

解答後は、受験校の模範解答を読む。何度かやるうちに、納得度の高い指標・記述に出会うので、それをベースに何度もやりながら完成度を上げていく。
これを何度も繰り返していると、「これがポイントだな」「こういう書き方が伝わりやすい」「このワード、ロジックは他にも使える」等と分かってくる。また、「この程度の解答で良いのだ」と納得できる。※完成度の高さを求める余り、基本を忘れる多年度受験生の落とし穴から逃れる訓練にもなったかもしれない。
09年の時は、9月初旬から2次試験まで、(昼休み等の隙間時間を利用して)毎日これを繰り返した。お陰で、経営分析は、ある程度納得できる内容を、指標1つ当り5分程度で記述できるようになった。本試験でも3つの指標を15分で予定通り終了できたので、時間・気持ちともに余裕ができ、計算等の問題にも立ち向かう事ができた。

Ⅵ)事例Ⅱ対策

09年はこの対策に躍起になった。08年の判定がCであったし、再現答案を見ても出来が悪いと思ったからだ。OBに相談した結果、再度マーケティング関連の本を乱読した。また、過去問の事例Ⅱを解きまくった。その解答を、与件を無視して1週間後に読んでみたりもした。自分では、「何か尤もらしい事書いているけど、芯が通っていないなぁ」という感想であった。
その結果、自分なりに考え、出した結論は、「どんなターゲット顧客なのかを十分に腹に落としていない内に、方向性や解答の作成に取り掛かっている」であった。
それを意識して事例を読むと、顧客は事例に必ず書かれていて、その周辺に顧客のニーズも書かれている、という事が改めて分かった。当たり前のように思うかもしれないが、これを強烈に意識できた事で解答が合格レベルに近づいたと思う。

私は、事例問題の学習段階は、①どんな答案が合格なのか?が分かる段階、②どうすれば80分間で合格答案を書けるようになるかを工夫する段階、③実際に合格答案を書ける段階、の3つに分かれると思っている。
こんな事を考えずに、サラサラっと合格答案を書けるようになっちゃう人が居るのも事実だが…。
振り返ると、私は①の段階に非常に時間を費やしたと思う。これは診断士協会が模範解答を公開しない為に混乱した事も一因だが、キチンと合格者の答案を分析しなかったからである。また、人の考え方を吸収する力が弱く、ねくすと勉強会の仲間やOBの言葉を吸収しきれなかった事も原因である。

ねくすと勉強会では、様々な受験生の意見を聞くことができるし、OBの助言も頂ける。その一つ一つが非常に大切ではあるが、全てを吸収できる訳ではないし、自分にとって優先順位が低い事もあると思う。※但し、2回以上、同じ事を言われた時はそこが自分のウィークポイントであると自覚すべきである。

私も「気付きノート」に、様々な助言や気付きをメモしていた。しかし、ある時期、ある時期で、それらのメモを棚卸し、自分に向き合う時間を09年は設けた。1次試験終了後は、H20、19年の事例を80分間で解いた。その解答とメモをもとに、「その通り実行できているか?」「改善できているか?」を検討した。そして、改善すべきポイントを改めて洗い出した。2次試験まではその改善に主眼を置いて、解答作成した。

自分で作成した解答はメーリングリストにアップして、他の方の意見を聞いた。自分の改善ポイントとしていた所を突っ込まれた時は、非常に効いた。また、改善ポイントと言っても複数あるので、改善できたと思っていても忘れた頃にまたやってしまう。従って、解答作成・修正を繰り返し、自分のウィークポイントをなくしていく事が大事である。

上記の通り、様々な失敗を重ねてきた。敢えてその失敗体験を書いてきたが、最後に、1つだけ自分の良かった所も書いておきたく思う。
それは、終始一貫、諦めなかった事である。仕事もきつかったし、決してお気楽なポジションでもなかった。その上、私は何度も不合格の烙印を押されたが、受験を止めようとは思わなかった。これは性格のせいかも知れない。
診断士試験は受験回数に制限がある訳ではない。自分が受けたいと思えば何度でも受験機会はある。冒頭に書いた通り、何回負けても、たった1回勝てば合格は合格である。

【おわりに】

診断士試験は、不思議な試験である。
合格しても、「これが必ず模範解答である」と言い切れない思いが残るし、一方で、「ここまで書ければ合格レベルだよね」とも言えてしまう。
それでも、受験生には合格答案を追及して欲しい。そして、合格答案レベルだと思ったら、ねくすと勉強会の議論の中や、OB等に見てもらって確認して欲しい。
最後に、その合格答案を本番で書ききるための工夫を重ねれば合格は近付くと思う。

その工夫は、同じ悩みを持っていたであろう歴代OBに聞いたり、合格体験記等で収集するのも有効だろうし、自分で工夫する事も必要だと思う。
その工夫は、ちょっとした事であったり、他人から見れば下らないような事もあると思うが、その人にとっては非常に大事な武器になると思う。

今後は、この試験で培った知識や考え方等を仕事等に活かしたいし、微力ながら、ねくすと勉強会の受験生が少しでも合格に近付くようなサポートができればと思っている。
多年度受験生の悩み・気持ちは、他人より理解できると思っているので、気軽に相談して欲しい。
様々な失敗を重ねてきた私だからこそ、できるアドバイスもあるかもしれない。

それと、最後になったが、こんなに出来の悪い受験生を最後まで見捨てず、励まし、助言して頂いた受験仲間やOBの方々にお礼を言いたく思う。

本当に、ありがとうございました。

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