1.はじめに
合格発表の日は、用事があり長距離の移動中であった。合格する自信がなかったため、合格発表の日であることは家族にも伝えていなかった。休憩時間に目を盗んで自分の受験番号を探した。だが、そこには自分の番号を見つけることが出来なかった。「やっぱり駄目だったか」と思い、運転に集中することにした。発表日の前から冷静に自分の再現答案と向き合ってみた時に、落ちる可能性の方が高いと分析していた。そのため、次の1年をどう取り組むかを主に考えていた。「今年で最後」と言って応援してくれていた妻に、どう報告するか、再チャレンジするのに、どう説得するかを考えていた。
夕方、時間が出来たので冷静にもう一度番号を確認した。驚くべきことにそこには自分の番号があった。どうやら、番号を見落としていたようだ。自分の番号があったことに動揺し、年度が間違っていないか、受験番号が間違えていないか、ページを更新したりして、何度も何度も確認した。何度確認しても番号があったので、そこではじめて合格したことを理解した。
この様にギリギリなレベルで合格であり、私から皆さまにお役に立てる情報を提供できるかわかりませんが、何か1点だけでも参考になれば幸いです。
2.受験のきっかけ
以前勤めていた会社では、小さい会社ということもあり、それなりに責任あるポストを任されることもあった。本来怠け者である私は、自己の成長に投資することをしてこなかったこともあり、期待される能力と、自己の能力とのギャップが大きく広がりはじめた。その他にも色んなことがあって、最終は逃げ出すように前の会社を辞めることになってしまった。そこまで落ちてはじめて人生を見つめなおす作業を行うことにした。苦手でほとんどやってこなかった、自己認識から始まり、どのような人生を終えたいのかまで、恥ずかしながら30歳半ばではじめて行いました。
これらの活動の中で、ゼロベースで考えた自身のあるべき姿は「小規模な企業に対して包括的な支援を行い、その企業を飛躍に貢献する」ということでした。そのような漠然とした想いから始まり、どのようにすれば出来るかを調べていく中で、「中小企業診断士」の試験のことを知りました。知った時は衝撃でした。正に自分のためにあるの試験なのでは?と感じるぐらい、勉強したい内容にぴったりな試験内容だったからです。
そこから、勉強法もよくわからない私の診断士試験合格に向けての格闘がはじまりました。
3.受験歴
2009年 1次 ×(4科目) 独学
2010年 1次 ○(3科目) 2次×(BCCCA) 受験校通信
2011年 1次 - 2次×(BBBA) ねくすと
2012年 1次 ○(7科目) 2次○ ねくすと
2009年(1年目)
最初の1年は、診断士試験の内容の把握からはじまりました。予備校に通うか迷いましたが、1次試験は独学でも問題ないとのことを聞き、独学での受験を決意。
この年に、診断士試験を見据えて簿記の3級を受験し合格する。ただ、学生時代にろくに勉強してこなかったので、勉強方法がわからず、勉強方法について説明している本を数多く読むことも行った。これは、現在も続いていて、年に1冊は読んでいる。
ただ、予備知識も少なく勉強方法も手探りで行っていることもあり、スケジュールどおり学習が進まず、時間切れで試験当日を迎えた、1日目の試験を終えてからファミレスで、泣きながら経営法務のスピ問をはじめてやったことを覚えています。
結果は、7科目の合計点が合格に数点足りず不合格でした。悔しくて何度も何度も採点しました。科目合格は、経済、財務会計、企業経営、運営の4科目でした。
2010年(2年目)
2年目は仲間探しからはじまりました。1次試験はこのまま独学でも合格できると考えていましたが、2次試験に向けて学習仲間が欲しいと感じていました。独学はあまりにも孤独でした。そのため、受験校の通信を選択しました。通信制で料金が他校と比べても安かったのですが、月に1度通信制が集まって受講する場が設けられていたのが選択した理由です。その場を利用して、メールアドレスを交換し、googleグループを使ってメーリングリスト等を使った情報共有の仕組みを立ち上げました。要するに独自の勉強会をたちあげた形になります。勉強会の名前は「診断士友の会」です。これは、診断士合格後も何らか交流を持ちたくて、そのような名前にしました。
この年で1次試験の残り3科目は合格しましたが、2次試験については80分で、全ての設問に何らかマスを埋めるというのが精一杯でした。当然結果は不合格(評価BCCA)でした。
2011年(3年目)
このまま勉強を続けていても合格することは難しいと考え、ネットで勉強会について調べていたところ、たまたま「ねくすと勉強会」のことを知りました。しかも説明会申し込み期限の1日前です。これは申し込むしかないと思い、即断で申し込みを行いました。
説明会では、創造していたよりも大規模な勉強会であること、そして皆の異様な雰囲気や迫力に圧倒され、これはすごい勉強会かもしれないと思い、ねくすと勉強会への入会を決意しました。
前の勉強会ではやる気だけは常に1番だと自負していたのですが、ねくすと勉強会では、やる気も知識も自分が1番下なのではと感じる程、受験生の士気が高く、毎週の勉強会への参加が楽しいと思う反面、怖くもありました。基本も何もない私でしたので、自信を持って作成した私のベスト答案は、ボッコボコに突っ込まれました。また、他の受験生のベスト答案に突っ込みを入れるためには、十分な準備をしてこなくては出来ません。そのような取り組みのなかで、多面的な考え方や、他者に読みやすい解答文の書き方、与件文の読み方等、多くのことを学ぶことが出来ました。
1次試験終了後はどねく(土曜日開催の勉強会)にも参加しました。すいねく(水曜日開催の勉強会)ではベスト答案のブラッシュアップ、どねくでは80分解きを行い、80分のプロセスの構築を行っていきました。
この年は落ちることを考えていなかったので、1次試験も受験していませんでした。合格への根拠のない自信だけはありました。
試験当日も昨年の2次初受験と違い、落ち着いており力を十分発揮することが出来ましたが、結果は不合格(評価BBBA)でした。
2012年(4年目)
昨年は1年近く2次の学習をした結果、事例2と3の評価がCからBにあがっただけで、事例1から3については、1度もAの評価がもらえていない事実について、真摯に受け止めるしかありませんでした。
とはいえ、1次試験7科目からの受験です。1次試験に集中するしかありません。中途半端に2次試験の対策を並行させると1次試験を落とすと判断し、1次試験までは2次試験の勉強は封印することにしました。ただ、OBに学習相談の際、この点について以下のアドバイスを受けました。
・多年度受験生は自分のスタイルを1度壊す必要があるが、8月からだと間に合わない可能性が高い
・2次試験を解く以外の2次対策もある
このアドバイスは後から考えると本当に有効でした。アドバイスを受けて行ったことが2つあります。1つは1次試験学習と並行して、ロジカルシンキングの本を読み、論理的思考について身につけること。もう1つは、2次試験、今までの自分のスタイルの延長に合格はないと考え、1から思考とプロセスを構築することでした。
ロジカルシンキング、クリティカルシンキングの本を2冊ほど読みましたが、これは1次試験にも役に立ちました。
1次試験になんとか合格でき、10ヵ月2次の過去問を解いてみましたが、全く思うように対応できません。何を書いて良いのかわからない、考えが纏まらないといった状況でした。このまま勉強を進めても去年の自分にすら追いつかない、と不安になりました。そこで考えたのは、ストレート合格の人と同じ思考でいこうと考えました。8月から2次試験対策を行い、見事合格する人が数多くいますので、その人たちの考え方や、やり方を学べば、自分でも合格できるのではないかと考えました。
「ねくすと勉強会」以外の勉強会のイベントや、セミナーなどにも参加しました。「ねくすと勉強会」で学んだことを客観的な視点で見たかったし、ねくすと勉強会以外の受験生や合格者がどのように考えているか知りたかったからです。
そして、自分の考え方や目指すべき答案を変えるべく、OBに学習相談3名をお願いしました。そのうちの1回は、ねくすとでスーパーSMと呼ばれているものであり、過去数年分のベスト解答を見てもらい何時間もかけて詳細にアドバイスや指摘を受けました。
この時は自分のプライドも何もなく、ただ合格したい一心で、根本的な基礎的なレベルから、相談を行いました。この3回の相談で、自分の考え方やプロセスを大きく変える起点となりました。簡単に結論だけ述べると自分の書きたい解答と、合格する解答は違うことを受け止めました。今から考えると昨年1年は、目指すべき解答がズレていたので、無駄な努力をしていたようにも感じています。
ただ、頭ではわかっていても、2年間で染み付いた思考を変えることは容易ではありませんでした、新しいプロセスで作ったベスト答案をすいねくに持っていっては、受ける突っ込みから不安と迷いが膨むことも多々ありました。ただそのような中でも周りの受験生やOBに引っ張られ、最後まで走りきることが出来ました。
1人では到底行けなかった領域に、OBや受験生が影響しあって高めあう、そんな最高な環境がねくすとにはあり、ねくすとが団体戦だと言っている意味が、2年目でやっとわかった気がしました。
思考を変えることに重点を置いたので、80分のプロセスを作るところも十分に時間をとれまず、試験当日は不安で一杯でした。80分で全てのマスが埋まることが出来るのか、そういったレベルの低い不安でした。ただ、実際はじまると集中でき、最後の1秒まで諦めずに取り組めました。
4.最後に
2次試験については正解が発表されないため、どのような解答を目指すべきがわかりません。そのため、予備校間でも解答に差異があります。またねくすとで議論を尽くしても解答としては、収束していかないことが多いです。
ですから、受験生同士の議論では自分の主張にだけ力を入れず、相手の意見や解答の裏にあるプロセスに注目し、偏った自分の思考を広げることが重要だと思います。
ねくすと勉強会は、私にとっては理想的な環境でした。過去勉強会を自分で立ち上げた時に欲しかった全てのものが揃っています。ねくすと勉強会がなければ、合格まで後何年かかったかわかりませんし、途中で投げ出していたかもしれません。これまで関わって頂いた全てのOBと受験生の皆様には本当に感謝しております。
この感謝をねくすと勉強会のOBとして恩返しできることに喜びを感じております。そして5年前に思い描いた理想の自分に1歩近づいたことにも喜びを感じつつ、更に高みを目指して精進していきます。