生産戦略のポイント2回目です。今回のテーマは、営業・製造・販売の連携です。
何年分も過去問を解いていると、事例ごとに出題論点のパターンが見えてきます。今回のテーマの「営業・製造・販売の連携」も、そんな典型的な論点のひとつです。
この論点のパターンとしては、①営業が製造能力を超えた受注をする、②製造が販売スケジュールにあった生産計画を立てられていない、③製品を販売しようとしても在庫が欠品している、でしょう。そしてこれまた典型的な論点のパターンは、製販会議の頻度を高める、需要変動がある製品を中心とした生産計画を立てる、見込み生産品は製品在庫で変動を吸収する・・・といったものです。受験テクニック的には、みんなが書きそうな論点を書くというのが、最もリスクが小さいので、こうした典型的な論点から入っていくことがあるでしょう。しかし、受験本番が初見問題対応であると考えると、営業・製造・販売の連携不足がどのようにして発生するかを考えておくことは有意義です。
第一には、情報の偏在です。生産事例で取り扱われる代表的な情報は、在庫に関する情報です。営業が製品在庫に関する最新情報を持っていないから、在庫から納品できない商品を売ったりするのです。その他にも、得意先の発注情報が前月下旬になっても確定しないので、製造部が見込みで生産計画を立てたりするのもよくある例ですね。このような場合の標準的な解答は、在庫情報を営業と製造が共有するとか、得意先から発注情報を早期に入手することですが、問題はそれをどうやって実行するかも合わせて考えることです。たいていの場合、そのヒントとなる情報が与件文の中に書かれていますので、それを手掛かりに解答することになります。
第二に、手順の標準化不足です。平成24年の肉屋さん事例や、平成25年の通信部材会社事例の主要論点は、手順の標準化による業務の効率化でした。平成25年の事例では、CADで使う部品データのライブラリ化や使用手順の標準化により、ボトルネックとなっていた設計担当業務の時間を削減することが求められています。また、業務を標準化することにより、技術部員が誰でも設計業務に従事でき、お客さんの問い合わせ対応もできるというメリットについても答えさせています。標準化はある意味鉄板なソリューションですので、気をつけておいてください。ただし、何でもかんでも標準化すればいいというものではありませんので、あくまでも事例の内容との関係で適用を検討してください。
第三に製品コンセプトの共有不足です。どんな製品を作るかのコンセプトが車内で共有されていないので、末端顧客を攻められないというケースです。その大きな理由は、顧客の製品ニーズを適切に把握していないことと、顧客ニーズを社内で共有できる仕組みが整っていないことです。平成25年の通信部材会社事例では、通信部材以外の新製品市場でなかなかうまくいかず、共同事業も失敗しました。売ろうとしていたのは、末端ユーザーが使う製品だったのに、そのニーズを調べることなく、共同事業の相手方が喜ぶ製品を大量生産してしまったことが、失敗の要因でした。こういったケースでは、営業体制の不備が一般的な理由ですので、顧客ニーズをとらえ、それを製品開発と製造にどのようにリンクさせるかということが論点となるでしょう。