これからしばらくの間、中小企業診断士試験の準備のプロセスを、5つの要素に分解して見てゆきたいと思います。ここでの5つの要素とは、Vision(目標)、Mission(任務)、Passion(熱意)、Action(行動)、Reflection(反省、熟慮)です。これらの要素は、私が管理職候補者にリーダーシップ論の教育を担当していたときに考えついたものですが、今では様々な場所で目にすることができます。いわばPDCAの別バージョンと考えていただけば結構です。
まずはじめに、Vision(目標)について考えてみましょう。中小企業診断士二次試験を受験される皆さんにとってのVisionは何でしょうか。「二次試験に合格すること」というのが答えかもしれませんが、皆さんに持っていただきたいVisionは、その先にあるもの、すなわち「診断士になること」です。二次試験を2回受験した中で、「診断士になること」を目標とすることが、試験合格の鍵であることが分かりました。
診断士になることをVisionとすることの狙いは、受験生思考を打破することです。受験生思考を打破し、診断士思考で試験に臨むことで、診断士試験の合格確率が格段に向上します。それでは、受験生思考と診断士思考の違いは何でしょうか。受験生思考では「きっと正解があるはずだ」という思考様式になりがちであるのに対し、診断士思考では「事例企業にとって最高のソリューションはこれだ」という考え方ができることが、最大の違いと言えるでしょう。与件文の中に、事例企業の課題や、進むべき方向性が明確に書かれていることはほぼありません。皆さんは、与件文という「社長の言葉」を手がかりに、例えば何がこの会社にとって問題で、その問題がなぜ発生しているのかなどを分析し、何をどのようにすれば問題が解決されるかを社長に提示することが求められるのです。
試験ですから、模範解答が用意されていることでしょう。その模範解答を正解とするなら、受験生思考の人は、正解そのものを当てようとして、なかなか見つからずに時間だけが過ぎていくといったことが起きがちです。一昨年の私がそうでした。逆に、診断士思考ができる人は、「こういった条件があるならば、こんなことが出来るじゃないか」と考えることができます。事例企業が進むべき方向性をしっかりと押さえ、その実現に最適なソリューションを、諸条件を踏まえて提示できる思考様式を身につけることができれば、どのような問題が出題されたとしても、自信をもって解答することができます。そうした診断士思考を身につけるために設定すべき目標は、「診断士になること」なのです。二次試験合格は、診断士になるための「手段にすぎない」ことをよくご理解いただければと思います
診断士仲間では、2次試験について「受かった人が診断士になるのではなく、診断士が受かる試験」と言われています。まさに同じことですね。
宮部さん
コメントありがとうございます。今実務補習に従事して感じるのですが、診断士としての考え方ができると、事例をより深く踏み込んで読めるようになりました。「診断士が受かる試験」というのは、まさにそのとおりだと思います。