2015年

平成27年度診断士2次試験の振り返り 事例Ⅳ

今回から、事例Ⅳを振り返ります。今回の事例Ⅳは、いつもの経営指標を答えさせる問題が第1問、予想P/Lを作成しCVP分析させる問題が第2問、プロジェクトの収益性を分析させる問題が第3問、大口取引先のメリットとデメリット解消のための製品開発の意義を分析させる問題が第4問でした。一部では「ポエム問題」と揶揄されている最後の記述問題は、配点が少ないことから、財務会計の分析計算能力を重視した内容になっています。難度は標準的だと思います。診断士試験のカバー範囲の基本を押さえていれば解ける問題だったと言えます。

ここで、本事例企業の方向性について簡単に見てみると、結論としてはX社との関係を維持しつつ、自社開発の技術を用いて新たな製品分野に進出し、経営の安定化と発展を目指すことです。その方向性を踏まえながら、各問題を振り返ってみましょう。まずは第1問です。
第1問は、2個の設問で構成され、設問1は同業他社と比較して事例企業が優れている財務指標を1個、課題となる財務指標を2個指摘させています。設問2は、事例企業の経営状態と経営成績について、同業他社と比較した場合の特徴を分析させています。
まず、与件文から事例企業の経営状態が伺える部分を見つけてみましょう。与件では、ここ数年間における製品ごとの需要変動や月次ベースでの生産数量の変動が大きくなっているとされています。また、来期以降にX社からの受注量が減少することが見込まれます。これらから、売上に関連するフロー系の指標、すなわちP/Lから何らかのネガティブなサインが出ている可能性が考えられます。その他には、経営状態に関する記述がありませんので、財務諸表から求めることにしましょう。このように、まずは与件文をベースに財務指標を見つけていく習慣をつけるようにしてください。その理由は、財務諸表の数字を機械的に計算しただけでは、良い指標と悪い指標が設問で求められた数より多く見つかった場合、事例企業の経営課題の解決とは関係ない設問でない指標を数字だけで選び、結果として一貫しない結果を拾ってしまう恐れがあります。
では、具体的に見てみましょう。売上に関係する財務指標としては、売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率などがあります。本事例ではそれぞれ17.67%、2.79%、2.28%、1.40%です。この中で、同業他社より勝っているまたは劣っている指標を探すと、勝っている指標は売上高総利益率と売上高営業利益率、劣っているのは売上高経常利益率と売上高当期純利益率です。ただ、どちらも数値上あまり大きな違いはありません。一応候補にしておきます。
次に、B/S絡みの財務指標を見てみると、流動比率が明らかに悪そうです。仕入債務と短期借入金が同業他社の約2倍あります。また、純資産も同業他社の3分の1強しかありません。これらから、必然的に比率や自己資本比率も悪くなります。効率性の指標では、有形固定資産回転率が良い反面、売上債権回転率が悪い特徴を示しています。以上をまとめると、良い指標としては有形固定資産回転率、悪い指標としては売上債権回転率、流動比率、負債比率(または自己資本比率)を取り上げることができると思います。あとは、これらの指標が現在や将来の経営課題に関連しているか確認してみると、有形固定資産回転率は、第3問で資産遊休化を避けるための固定資産活用施策について問われていますし、流動比率や負債比率(または自己資本比率)については、第2問で来期のX社からの受注減を見越した予想P/Lの作成と損益分岐点分析につながっていきます。事例としての一貫性も担保されそうです。設問2は、設問1の内容をまとめれば良いでしょう。詳細は省略します。
今回の設問は、財務指標が現れる理由について、指標ごと解答させる問題は出題されませんでしたが、そのような出題には指標ごと、与件や設問に因を見つけに行くようにしてください。財務分析は企業分析や企業診断の基本ですので、指標の意義も含めてしっかりと理解して使えるようにしてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください