シャープが資本金を1億円に減資して、法人税上の中小企業になるかもしれないとの報道がありました。これを受けて株式市場ではシャープ株が大幅に売られるなど、大きな波紋が広がっています。
さて、診断士受験生の皆さんは、この会計処理を仕訳ることができますでしょうか?そして、この処理が持つ意味を説明できますでしょうか?
まず、資本金を減額して繰越利益剰余金に振替えるので、仕訳は
借方 資本金1200億円 / 貸方 繰越利益剰余金1200億円
となります。今後シャープは、将来発生するかもしれない追加的な損失を、この繰越利益剰余金を取り崩して補填することになります。
一方で、資本金が0にならない、正確には純資産の部が0にならないということは、株主の持分は一定程度保たれているわけです。ここで、負債と資本の関係を説明するMM理論の考えによれば、税効果を無視すれば、企業価値は資本構成(デットとエクイティ)に影響されないということになります。この状態で、企業価値を保ちつつ、シャープが安定的にビジネスを継続し、キャッシュフローを生み出していけるのであれば良いのですが、そうでなければ、B/Sの純資産を食いつぶすだけで、最終的には債務超過に陥る恐れが高くなります。結局のところ、企業はP/Lの部分でちゃんと稼げなければいけないというのが私なりの結論です。
報道では、中小企業化による外形標準課税の免除などのメリットも報じられていますが、経営にもたらす効果は大きくないでしょう。むしろ、ここまでしなければならない財務状況に対する不安から、取引先の信用低下というさらなる試練が待ち構えているように思えます。シャープの手法は、目の付け所は良かったかもしれませんが、財務的には徳俵に片足をかけた状態といえるでしょう。
ところで、私の自宅のエアコンは、3年前に買ったシャープの製品なのですが、面倒を見ていただけるのでしょうか…
追加です。
中小企業基本法によれば、製造業では、資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人も中小企業に属します。