2016年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験)

診断士試験とコミュニケーション力

今回は、ちょっと変わった視点から、診断士試験に関係するコミュニケーション力についてお伝えします。

先日の民進党の党首選挙で、蓮舫氏が過半数の得票で党首に選ばれました。蓮舫氏といえば、民主党政権時代の事業仕分けで、スーパーコンピュータ関連事業について、「世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか?」という発言で注目を浴びました。診断士試験に関係するコミュニケーション力について考えるとき、この発言は面白い視点を与えてくれます。

この質問には、いわゆる「オープン型」と「クローズ型」の質問形式が含まれています。発言の前半部の「世界一になる理由は何があるんでしょうか?」という質問は、自由な回答内容を質問の相手方に許す「オープン型」の質問です。一方、後半部の「2位じゃダメなんでしょうか?」という質問は、回答が「はい」か「いいえ」のどちらかになる「クローズ型」質問です。発言当時、後半部の発言が集中的に報道され、蓮舫氏は大きな批判を受けましたが、質問技法としては全体的にバランスが取れたものであったといえます(とはいえ、お考えそのものの是非に関する評価は別です)。

クローズ型の質問を投げかけるとき、多くの場合、質問者の中ではすでに結論が決まっています。クローズ型の質問を投げかけることにより、質問者は相手に結論への支持を求めているともいえます。なぜなら、質問者の問いに対して、真っ向から反対する回答をするのは、心理的に大きな圧力があるからです。それゆえ、クローズ型の質問は、オープン型の質問により議論を尽くしたあと、「やるかやらないか」を決めるときの質問であると思います。ところが、結論を急ぐあまり、またはすでに何か結論がある場合、クローズ型の質問からコミュニケーションを図ろうとする人がいます。診断士試験の対応を考える場合、このようなコミュニケーションはとても危険です。

事例企業が抱える課題や問題が、与件文に直接記載されるとは限りません。事例企業の経緯を俯瞰しつつ、表面化しているSWOT要素や現場の声など、様々な情報を総合的に分析して解答に臨まなければなりません。これは二次試験だけでなく、ビジネス上の課題に取り組む際に常に求められる姿勢でしょう。このとき、過去の経験や事実から先に結論を出してしまうと、与件情報の一部しか使えなかったり、最悪の場合、自分の結論で与件を解釈してしまい、期待される解答の方向性からずれた答案になってしまうことが考えられます。二次試験であれば、事例2はセールスプロモーションだとか、事例3はQCDだとか、先に論点を決めうちしてしまい、実は裏で組織人事的な問題があったとか、財務上の制約が大きかったとかいう背景を見落としてしまうことも考えられます。結果的に、部分点はもらえるが高得点につながらない答案にとどまってしまう恐れがあります。解答にあたっては、頭の中でいくつもオープン型の質問を展開し、それらを検討した結果、クローズ型の質問で結論を出すという習慣をつけてください。

さて、冒頭の蓮舫氏の質問ですが、後半部は「2位以下を受け入れられない理由は何ですか?」という質問であれば、これほどまでの批判を受けることがなかったのだろうと思います。政治家は当然ですが、診断士もコミュニケーション力の向上は避けて通れません。そのことを改めて強調したいと思います。

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