2015年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験)

「方向性」の「重要性」

昨日の勉強会では、平成19年事例1に取り組みました。個人的には、この事例は過去問の中で最も難しく、最も質の高い事例のひとつだと思います。理由は、事例企業の方向性の明確化なくして答えが出ない、言い換えれば、事例文に書かれている問題点を改善するだけでは、事例企業の経営課題の解決には不十分だからです。

その一例として、高級アクセサリーのXブランドを取り扱ってきた事例企業が、カジュアルなYブランドとのダブルブランドを今後どのように活用すべきかについて考えてみましょう。与件文には、Yブランドを取り扱うようになった経緯は書かれていません。事実として、事例企業がYブランドを取り扱っていると書かれているだけです。一方で、第5問では、事例企業の収益性向上のための施策が問われ、第3問では、直営路面店の戦略的位置付けと、その達成のために必要な施策が問われています。それでは、高級なXブランドのみを扱っていたから、ビジネスが限界を迎え、止むを得ずYブランドを取り扱うようになったのでしょうか。すなわち、YブランドはXブランドの補完的役割とすべきなのでしょうか。その可能性は否定できませんが、与件のエビデンスから、次のようなストーリーも描けるでしょう。

すなわち、「Yブランドを入り口として若い顧客を獲得し、将来的には高級なXブランドの顧客となるよう長期的に囲い込み、安定的な収益性を獲得する」というものです。例えば、事例企業は、取り扱い商品の原価率を40%にしたいという目標があります。ということは、今は原価率がもっと高いかもしれません。仕入原価の低減や間接費の低減に繋がるような記述がないことから、販売価格の方向からアプローチしてみると、認知度が低くブランド力が弱いニッチ商品を、価格を下げて売っている可能性が考えられます。事例企業がそのような状況を打破し、成長するためには何が必要でしょうか。単に高い商品をあてずっぽうで売っても効果はありません。目指すべきは、収益性の高いXブランドの購入層を作り上げることです。そしてその入り口として、Yブランドが活用できるのです。それが成功するよう、ファッション中心地にある直営路面店を拠点に、ブランド認知度を上げてブランド力を向上させるとか、ベテランの不満を解消して、Yブランドを担当している若い社員を育ててXブランドも売れるようにする役割を与えるとか、さまざまな打ち手が考えられるようになるのです。

この「Yブランドを入り口として若い顧客を獲得し、将来的には高級なXブランドの顧客となるよう長期的に囲い込み、安定的な収益性を獲得する」が方向性です。この方向性を明確にすることで、解答の一貫性や論理性が格段に向上します。だからこそ、方向性は非常に重要なのです。方向性のことについては、これからも引き続き書いていきたいと思います。

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