今回は、平成25年度事例Ⅰ、第7〜第8段落です。
⑦骨・関節サポート向けサプリメントを発売した当初10億円程度であった売上も、ほぼ前年比 130%で伸張してきた。しかし、当時と比べて、A社は正規社員の数を大幅に増やしているわけではない。ここ2年、大学新卒の正規社員を若干名採用するようにもなったが、売上規模を急拡大させた中にあって、毎年2~3名程度の正規社員を中途採用してきたに過ぎない。他方、顧客に直接対応するコールセンターのオペレーター業務は、非正規社員とはいえ直接採用し、売上規模の伸びに応じて増員を行っている。その離職率は、5パーセント程度と業界の中では低水準である。
⑧とはいえ、A社は、売上のほとんどを、骨・関節サポート向けサプリメントが占めており、次世代を担うような新商品が登場しているわけではない。大手メーカーが様々な商品展開で新市場を開拓する中で、A社も今後岐路に立つことになるかもしれない。
骨・関節サプリの売上は、これまでほぼ前年比130%で成長してきたとのことです。素晴らしい業績ですね。こんな急速な業績伸長にもかかわらず、事例企業は正規社員を大幅に増やしていません。与件によれば、毎年数名の中途採用者のみ正規社員として採用してきたとのことです。一方で、コールセンターのオペレータは、非正規社員であるものの、事例企業が直接採用し、売上の伸びに合わせて採用数を伸ばしています。また、離職率も低く抑えられています。これらの情報から、事例企業の現在のビジネスモデルは、成長の観点から見ればオペレータ依存型であるといえます。売上が伸びるのに合わせてオペレータ数を増やしているということは、素直に考えれば応対すべき顧客数が増えているということですね。同じ売上増大でも、顧客数が変わらず顧客1人あたり購買数が増加する場合もあるでしょう。この場合はオペレータをそれほど増やす必要はありません。つまり、事例企業の成長は、新規顧客の開拓による顧客数の増加によるものである可能性が考えられます。新規顧客は、前の段落で触れた広告宣伝により開拓されたといえるでしょう。そうして獲得した顧客との関係性を、人件費は高いが勤務経験がある(有能な)オペレータが維持強化するというのが本事例企業のビジネスモデルです。
このようなビジネスモデルにおける正規社員の役割は何でしょうか。一言でいえば「サプライチェーンと社員の管理」です。事例企業のビジネスモデルでは、一本足の軸であるサプリメントが円滑に供給されることと、オペレータが継続的に商品を顧客に売ってくれることが企業存続の条件です。それゆえ、サプライヤーであるX社との関係を良好に維持し、気持ちよく働いてもらうようオペレータを適切に管理できる中途採用社員を採用してきたのでしょう。正規社員として採用した理由としては、業務に対する社員の長期的なコミットメントを期待していたのだと考えられます。
しかし、社長はこのままではいけないと考えているようです。つまり、骨・関節サプリ一本に依存し、次世代の新商品の企画・開発ができていないようでは、様々な商品を展開する大手企業が参入しているサプリメント業界での生き残りが難しいと感じているかもしれません(ここで、なぜ大手企業は多様な商品ラインナップを展開できるかについて考えるのも意味があることです)。事例企業も「岐路」に立たされるとまで言っているぐらいですから、社長の問題意識は非常に高いです。それゆえ、近年になって大卒の新入社員を数名ではありますが採用し始めたのでしょう。そんな大卒新入社員に期待する役割といえば…言うまでもないですよね。
これまで12回にわたって、設問と与件を、単なる情報ではなく「インテリジェンス」として理解するための読み方を紹介してきました。これでもまだ読み方としては一部ですし、紹介していない内容もあります。とはいえ、これまでさらっと与件や設問を読む習慣がついている方、与件をどのように解釈・理解すればよいかわからなかった方にとっては、新鮮な内容だったのではないでしょうか。そうであれば幸いです。
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