ここからは、事例別のポイントについて触れていきたいと思います。まず初めが、事例 Ⅰ 組織・人事戦略です。
事例Ⅰが苦手だという方、結構いらっしゃいます。私も初回受験の平成25年は、結構できた手応えがあったにもかかわらず、評価はBでした。しばらくは凹みましたね。事例Ⅰは、人や組織といった、無定形な内容を取り扱うが故に、題意や趣旨を取り違えてしまうケースが多いようです。また、なんでも書けてしまうという錯覚が起こりやすい事例でもあります。
何度も書いていますが、皆さんが試験本番で目にする問題は、受験生全員にとって初見問題ですから、設問と与件文を読んだ時点で、「この企業の方向性はこれだ」とあたりをつけられるようになるだけで、精神的に非常に楽になります。あとは、その方向性に沿った成長や課題解決を、人や組織の観点からどのように図ってゆくかを考えるだけです。ただし、その「方向性」を間違えると大外ししかねません。
結論を言えば、社長が「この会社をこのような会社にしたい」または、皆さんが診断士として、「この会社はこのような会社になることが望ましい」といった思いが、そのまま方向性になります。あとは、それを組織・人事の観点からどうすれば達成できるかについて、設問に沿って書けば良いのです。
気をつけていただきたいのは、たとえ課題が与件文に明確に書かれていたとしても、それをそのまま引っ張ってくるのではなく、「この会社の場合はどのように解釈できるのだろう」と考えることです。例えば、有名な「ゆでガエル」事例では、社長が「ゆでガエル」という言葉で何を言いたかったのだろうと考えることです。すなわち、現状に安住せず、常にチャレンジ精神をもって変革を進めてゆく組織にしなければならないというのが、社長の思いだと考えられます。