14OBの井澤です。中小企業診断士二次試験まで約ひと月となりました。これから本番に向けて最後の追い込みに入る受験生の方が多いことと思います。時間があれば一つでも事例を解きたいと思われているでしょうが、ここで少し立ち止まって、与件文や設問をちゃんと読めているか再確認してみてはいかがでしょうか。
一例を示します。平成29年事例Ⅲの第2問で、事例企業は生産業務を整備して、それによる余力をCNC木工加工機の生産に当てることの課題と対応策について問われています。与件を読むと、事例企業は機械専任担当制をとっており、従業員は他の機械を操作することができず、機械の操作方法や加工に関する技術情報は各担当者が保有し、標準化やマニュアル化されていないとあります。
ここでよくある答案は、「機械の操作方法や技術情報をマニュアル化し、従業員に共有させて全ての機械を操作できるようにし、生産性を高めて余力を生み出す」というものでしょう。この内容は、いわゆる「与件の裏返し」ですが、本当にそれでいいのでしょうか。実際にその対応策を実行すると、生産現場に大きな混乱がもたらされるでしょう。その理由は与件に書かれてあります。事例企業は「顧客が要求する加工精度を保つため」機械専任制を採用しているのです。そして、新規事業である木工加工機は、展示会でその加工精度が評価されているとあります。つまり、機械専任制は無目的に行われているわけではないということに、受験生は気付くべきなのです。
以前当勉強会HPで、与件をインテリジェンスとして読むことについて連載しましたが、この点に気づけなかった方は、与件や設問をまだ「インフォメーション」のレベルでしか読めていないということです。事例企業の社長にコンサルティングする診断士として、社長の状況判断や意思決定に貢献する「インテリジェンス」まで読みのレベルが達していないといえます。
二次試験は「与件の箱庭」の戦いです。本番直前の今こそ、与件や設問が求めていることの本質を見抜く読み方をまずは身につけるべきです。