今回は、答案の書き方について考えてみます。
よく、読みやすい答案の方が合格しやすいと言われます。合格するかどうかは中身次第だろうというご意見もあるでしょうが、ここで答案の採点プロセスについて考えてみたいと思います。
計算しやすいように、二次試験の受験生が5000名、試験日から合格発表まで7週間としましょう。また、7週間は1週5日の実働とし、実働35日と考えます。1個事例あたり5000枚の答案が作成されるわけですから、単純に35で割っても1日あたり約143枚採点処理しなければならない計算です。実際には得点集計などありますから、採点に充てられる日数が30日としたら、1日あたりの採点枚数は167枚です。
論文試験の採点は、採点者によってばらつきが生まれることから、通常は複数の採点者によって採点されます。事例Ⅲでよくあるトピックですが、前工程(第1採点者)が終わらないと後工程(第2採点者)が始まらないので、実際にはその時間ロスを考慮すると、余裕を持たせるために、最大1日200枚程度採点する可能性があると考えられます。
採点者が何人確保されているかによって採点負荷は変化しますが、いずれにせよ1日に200枚の論文採点がとてつもない負荷であることは事実です。模範解答や採点基準も準備されているでしょうが、そのとおり書いてくる受験生はそう多くはないはずです。模範解答から外れた内容であっても、論理性や妥当性の観点から積極的に加点するように努めてくれているはずです。そんな採点作業では、採点者も人ですから、読みやすい答案に良い点を与えたくなるものです。逆に、一読して頭に入らない、解答中の言葉のつながりが複雑といった答案は、同様の試験の採点に携わった私の経験からも、窓の外に放り投げたくなる気分になるものです。
同じことは、診断先に提出する診断報告書でも言えます。忙しい社長さんが一読して、あるいは夜に晩酌しながらでも読めるような診断報告書が理想形であると思います。多くの解答要素の詰め合わせや、極端に一文が長い解答のように、社長が頭と時間を使って読まなければならない報告書は、診断費用プラス余計な時間とエネルギーというコストを顧客に支払わせているのと同じです。
怖いかもしれませんが、部分点狙いではなく、本当に社長に伝えたいことを絞り込み、分かりやすい文章(一文が短く、主語・述語・形容句等がシンプルにつながる文書)で表現する習慣を身につけてください。