財務のフリーキャッシュフローを苦手にしている方がいらっしゃいます。フリーキャッシュフローの定義は幾つかありますが、典型的なものとしては、「FCF=営業利益×(1-実効税率)+減価償却費−投資−運転資本の増分」があります。この中で、特に難しいのが、減価償却分を足しこむことと、運転資本の増分を引くことです。
減価償却分を足しこむというのは、減価償却費が会計上の費用概念であって、実際は現金の流出が伴わないので、現金はP/Lより多く残っているということを意味します。キャッシュフロー計算の基本ですね。難しいのは、運転資本の増減の考え方です。
運転資本の増分とは、売掛金と棚卸資産の増分の合計から買掛金の増分を引いた金額で、これがプラスであればキャッシュフローはマイナスであり、マイナスであればキャッシュフローはプラスだということです。この感覚は、皆さん自身が「宴会の幹事」になったと考えると実感できます。
売掛金の増分とは、先週の宴会で幹事が立て替えた金額です。例えば5人で3万円だったとしましょう。これは、3万円を立て替えて、「◯◯さん幹事で立て替えありがとう」という評価を仕入れたことと同じです。その他にも、先月の宴会費をクレジットカードで立て替えた分5万円のうち、今月会費を徴収した分が2万円あるとします。ごちそうになったままの人もいるのですが、無情にも今月銀行口座から5万円の引き落としがありました。
ここで現金の出入りを振り返ると、キャッシュアウトは引き落とされた5万円です。キャッシュインは徴収済みの2万円ですから、キャッシュは3万円の減少です。
一方、立て替え分すなわち売掛金の増分は、先週の立て替え分の3万円です。先月の宴会の未徴収会費は3万円で、先月末より2万円減少しています。つまり今月の会費徴収により、幹事としての評価が現金収入になったのです(当然評価の在庫は減少します)。また、先週の3万円はクレジット払いなので、支払いは来月、すなわち買掛金が3万円増えていますが、先月分の引き落としで買掛金が5万円減っているので、相殺して買掛金は2万円の減少です。以上をまとめると、売掛金の増分は+3万円、立て替えの評価すなわち在庫の増分は−2万円で合計+1万円、買掛金の増分は−2万円ですから、+1万円引く−2万円で+3万円になります(マイナスを引くとプラスになりますね)。差がプラスですからキャッシュフローはマイナス3万円となり、実際のキャッシュの減少と一致します。
このように、財務も身近な例で考えれば分かりやすくなります。今度皆さんが宴会の幹事を務めることになりましたら、キャッシュフローを勉強するチャンスだと考えてみてはいかがでしょうか。ところで、クレジットカード払いは現金の出がないので、一時的にキャッシュリッチになったと錯覚する危険があります。いつかは支払わなければならない負債ですから、ご使用は計画的にお願いします。