2015年 コラム・つぶやき 勉強法(二次試験)

二次試験直前期にできること(2) 発想の転換「二次試験は試験でない?」

中小企業診断士の受験期間中、いつも不思議な感覚を覚えていました。それは、「中小企業診断士試験とは、なんと変わった試験なんだろう」という感覚です。一次試験はまだしも二次試験は、解答の趣旨は示されるものの、模範解答は発表されない。全く違う論旨の解答が含まれている再現答案で合格している人がいる。同じ論文試験を課している国家試験、特に法律系の国家試験では、こうはいかないはずです。少なくとも、対立する学説の指摘と説明は求められることでしょう。「主流の学説だとこう解釈できるけど、他の学説だとこうとも解釈できる」ということを説明しなければなりません。

合格してみてハッと気づいたのは、診断士二次試験は、いわゆる純粋な試験ではないということです。試験であれば、正解や模範解答があり、それに最も近いことを書いた受験生が合格することになっています。そうでなければ何なのか?たどり着いた結論は、「二次試験はオーディションである」というものでした。受験生はオーディションを受ける俳優・女優の卵です。彼らは会場で台本である「与件文」と、演じる役のセリフとなる「設問」を渡されます。出題者たる監督から言われるのは、「中小企業診断士であるように演じてください」というものです。オーディションと違うのは、文としてのセリフは渡されず、セリフは自分で考えてくださいと言われることです。監督に受け入れられる役風は何か、監督はこの台本で何を伝えさせたいと考えているのかを、白書という情報、一次知識、与件文から判断し、最高の演技を見せるのです。そして、監督の眼鏡にかなう、上位約20%が合格するのです。

台本を普通に読めばこんなことなんて書かないだろうという、ゴルフで言えばOBにあたるような解答は論外です。しかし、論旨の一貫性という条件のもと、監督に「こんな解釈もできるのか」と思わせるぐらいの振れ幅はあるはずです。なぜなら、いくら完璧に台本を書いたつもりでも、完全に一意に解釈できる台本はないからです。ロジックの塊である法律でさえ、解釈をめぐる論争があるぐらいですから。大事なことは、求められた役割である「中小企業診断士」として、台本をどれだけ高度に演じられるか、言いかえれば、事例企業に診断士として、どれだけ質の高い、本質に迫る分析と助言ができるかということです。そう考えることができると、小手先の受験テクニックだけでは不十分だし、いざとなればテクニックを離れたやり方もあるんだということに気づけるでしょう。

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